光・レーザー関連機器開発を手掛けるトリマティスが2024年に設立20周年を迎えた。
代表を務めているのは島田雄史氏だが,2004年に島田氏を含む3名で起業したのが始まりだったという。会社名はその3を意味するtriと光の三原色RGBを想起する,色合いを意味するスペイン語のmatizを組合わせた造語に由来する。
当初は光通信関連事業をメインとしていたが,設立から約10年が経過してから光技術を利用した水中ビジネスに着目し,水中LiDARの開発を進めてきた。そして,設立20年目にして水中ビジネスをより加速させるため,新たにAQUADJUSTという会社を設立した。
そこで今回,島田氏にトリマティス設立20年を振り返っていただくとともに,新会社設立の経緯や今後の取り組みなどについて語っていただいた。
─会社設立20周年を迎えられ,まずは率直なお気持ちをお聞かせください
正直よく持ったなって思います。10周年の時,設立記念パーティーを行ないましたが,実は開催することを渋っていました。なぜかというと,そういうことをやると,会社が傾くのではないかと予感したからです。
トリマティスの設立は2004年ですが,当時は光回線サービスが成長していて,次世代ネットワーク(NGN)も提唱されていました。我々も10年後の需要を見据えつつ,高速VOAを組み込んだ高速応答光増幅器などの開発を進め,大手キャリアや研究機関に納入し,テストベッド(プレ量産ステージ)まで漕ぎつけました。
しかし,結局方式が変わってしまい,この時の売上の柱だった高速応答光アンプの売上が止まってしまったんです。通信分野における半導体・電子デバイスが進化したためでした。これが設立して10年目の出来事でした。
ここから折り返しの10年は本当に苦闘の連続でしたね。高速応答光アンプを空間通信分野や衛星光通信分野向けに提案を続けていたのですが,次第に先細っていきました。これを打開するべく開発したのが,LDドライバです。この製品を加工機やLiDAR市場に売り込みました。
しかし,LiDARに関しては,我々が市場に乗り込んだ時にはすでにレッドオーシャンの状況になっていました。現在は,NDAを結んで受託開発をしていますが,自前でLiDARの用途開拓ができないものかと,その方向性を考えていました。
その時に触れたのが,貴誌『月刊オプトロニクス』に掲載された,海洋研究開発機構(JAMSTEC)の石橋(正二郎)さんのインタビュー記事です。 記事の中で,石橋さんが水中LiDARのことを熱く語られていて,これは面白いなということで,オプトロニクスさんにお願いして,石橋さんを紹介していただきました。それでJAMSTECに行き,石橋さんや吉田(弘)さんたちとお会いし,色々とお話しさせていただきました。水中の世界に飛び込んだのはここからです。
JAMSTECさんでは20年くらい前から水中で光の利用応用をやっていました。しかし,当時はまだ超音波が主流で,光は実用面で懐疑的なところがありました。そういうこともあり,水中LiDAR開発は当初,助成金や委託事業がなかなか通らずにいたので,周知を図るという意味でフォーラムの開催を企画しました。
この時,JAMSTECの吉田さんにも協力していただき,2018年1月に『アクアフォーラム』を開催しました。これが盛況で100名近くの来場があり,「これだけ多くの方が水中への光利用に関心がある。これであればコンソーシアムも立ち上げることが出来そうだ」と考えました。
その後,必ずしも順調なコンソーシアムの立ち上げとはいきませんでしたが,ちょうど電子情報技術産業協会(JEITA)が業界横断ビジネスを促進する『共創プログラム』の公募を行なっていたので応募し,採択され,2018年6月に第1弾の取り組みとして『ALAN(Aqua Local Area Network)コンソーシアム』が発足しました。