CLEO-PR2022:9年ぶり日本で開催へ

千葉大学・教授 尾松孝茂氏に聞くCLEO PacificRim開催の意義と期待

15回目となるCLEO PacificRim(CLEO-PR)が9年ぶりに日本に帰ってきた。会場は札幌コンベンションセンター(北海道)で,2022年7月31日から8月6日まで開催される。また,今回はイメージング,センシングおよび光メモリに関する国際シンポジウム『ISOM』と光学に関する国際会議『ODF』も同時開催する。

第1回目,第2回目は幕張メッセ(千葉県)で行なわれ,日本がこの会議を主導してきた経緯がある。CLEO-PRは環太平洋地域におけるレーザーと光エレクトロニクスに関する研究の発表,議論と交流の場となり,最新の研究・技術トレンドを把握することができる会議として注目されている。

そこで今回,CLEO-PR22のゼネラルチアを務める千葉大学大学院工学研究院・教授の尾松孝茂氏にその開催の意義と期待について語っていただいた。なお,現在CLEO-PRでは投稿論文を受け付けている(締切日:3月4日(金))。

≪CLEO-PR WEBサイト≫
https://www.cleopr2022.org/index.html

-まずはCLEO-PRについて紹介をお願いします。
CLEO-PRは1995年に日本で第1回が開催され,今回で15回目となります。これまで日本では5回開催されましたが,前回2013年の京都から9年ぶりに北海道札幌市で行なわれます。

このCLEO-PRは,環太平洋地域においてレーザーや光エレクトロニクスなど,光科学の研究のビジビリティを高めることを目的に発足されました。当初CLEOはアメリカにしかありませんでしたが,ダイバーシティを考えたときに3極に分かれた方が良いということでアメリカCLEO,CLEO-PR,CLEO Europeの3つに分かれたという経緯があります。
 
CLEO-PRの第1回目は千葉県の幕張メッセで開催され,968名が参加し,成功裏に閉幕しました。その後も日本を中心に開催されてきましたが,韓国,台湾,中国,オーストラリアといった地域で光科学の研究が活性化してきたこともあり,2005年頃からはこれら環太平洋地域をローテーションするようなかたちで開催されてきました。

CLEO -PRで特筆すべきなのは,そもそもの出発が日本だったという点です。環太平洋地域の光科学は当初,日本がけん引していました。その後,他のアジア諸国が徐々に台頭し始めてきて,日本のビジビリティが下がりつつありました。このような状況の中で,日本で9年ぶりにCLEO -PRを開催するというのは日本の光科学の復活,それからプレゼンスの向上という意味で私自身,非常に重要なキャスティングボートを担っているのではないかと思っています。

ご存知だと思いますが,この10年間,日本の物価は全く変わっていませんが,韓国の物価は倍くらい上がっています。昨年には韓国が賃金の面で日本を追い抜きました。このままだとGDPや経済規模の面でも日本のアジアにおける地位が本当に下がってしまうのではないかと危惧しています。ですので,ここは一つの踏ん張りどころで,日本にCLEO -PRを誘致して,ぜひ成功につなげたいという思いがありました。

今回は,光学・フォトニクス設計と製造に関する国際会議『ODF』と光メモリ関連の国際会議『ISOM』も共催で行なわれます。これらは日本がリードしている研究分野です。ぜひとも日本の技術力の高さを改めてアピールしていただければと願っています。

また,札幌は観光地としてもアジアの方々に非常に人気が高いので,前回の京都の時と勝るとも劣らず多くの人が集まっていただけることを期待しています。ただ,新型コロナウイルス感染症の影響で,海外からどれくらい来訪されるかが分かりにくい状況にあります。ですから,一刻も早く現状の鎖国状態が解除されることを切に願っています。

-国内外におけるレーザー,フォトニクス,光エレクトロニクスの最近の研究開発のトレンドを教えていただけますか。
日本は,海外と比べて割と独自性の強い研究を行なっていると見て取れます。レーザーを例にしますと,光コムが一つ。美濃島薫先生(電気通信大学)や西澤典彦先生(名古屋大学)などがやられている研究分野ですが,利用という面では距離計測だけでなく,分光など色々な研究開発のアプローチが取られています。

また,平等拓範先生(理化学研究所/分子科学研究所)のマイクロチップレーザーの研究も,恐らく海外ではほとんど聞かないものですから,そのようなユニークなレーザー装置というのが,日本のトレンドをつくっているのではないかと思っています。

我々は光マニピュレーションに関する研究を行なっていますが,通常は1個の微粒子を捕まえてどうこうするという研究が多い中,日本では光の圧力を使い,例えば結晶や秩序を作製したり,化学反応や物質科学と融合したりするような研究を多く見ることができます。CLEO-PRの現地実行委員長の笹木敬司先生(北海道大学)が石原一先生(大阪大学)と一緒に文科省の新学術領域の一環でやられていた光の力でナノ粒子を一粒ずつ選別・輸送する研究も一つの大きな流れになっています。

また,的場修先生(神戸大学)がやられている散乱光学も大きな流れの一つです。これもおそらく海外ではほとんどやられていないのではないかと思っています。この研究はコンピューターベースの画像処理と散乱光学を組み合わせて新しい光の分野を切り拓こうという試みです。私は非常に大きなインパクトのあるお仕事だと思っています。

日本と比べて,中国と韓国はそのトレンドが随分と異なります。中国や韓国はアメリカのトレンドの影響を強く受けています。光通信や量子光学,メタマテリアル,プラズモニクスといった研究分野です。日本は独自路線にあって非常にユニークな研究が多いので,CLEO-PRではそのあたりを楽しみにしていただき,注目していただけると良いのではないかと思っています。

同じカテゴリの連載記事

  • レーザー核融合技術をクリーンエネルギーや脱炭素化の手段にする! ㈱EX-Fusion 松尾 一輝 2022年06月07日
  • Opticaが目指すものとは? ─学会も変化が求められる時代へ Optica 会長 河田 聡 2022年05月20日
  • SDGsに貢献する光技術となるか? ─太陽光励起レーザーの現状とその可能性 東京工科大学 大久保 友雅 2022年04月08日
  • 産総研ゼロエミッション 国際共同研究センター(GZR)と光技術
    第三回「人工光合成研究チーム」
    (国研)産業技術総合研究所 佐山 和弘 2021年12月22日
  • 産総研ゼロエミッション 国際共同研究センター(GZR)と光技術
    第二回「多接合太陽電池研究チーム」
    (国研)産業技術総合研究所 菅谷 武芳 2021年11月05日
  • 産総研ゼロエミッション 国際共同研究センター(GZR)と光技術
    第一回「有機系太陽電池研究チーム」
    (国研)産業技術総合研究所 村上 拓郎 2021年10月06日
  • 「サーモカメラコンソーシアム」が設立 ─ 信頼される装置であり続けるために サーモカメラコンソーシアム 末松 卓 2021年07月07日
  • 光の層が生み出す新たな世界 ─ 蛍光によるプリミティブな表示デバイスの可能性 cog 石川 将也 2021年05月26日