1. Panel Printerの概要
Panel Printerは1997年に米国のMRS Technology Inc.(MRS社)から,TFT液晶ディスプレイ用として開発された露光装置である。この露光装置は,シリコンウエハを対象とした半導体用露光装置をベースに,シリコンウエハよりも大きいガラス基板のスループットを高くするといったコンセプトに基づき,単一レンズを用いたステッパー型露光を,1対のレンズを使ったステッパー露光にシステム変更したものであった。MRS社の初期露光装置は,Panel Printer model 4500で,350 mm×350 mmから450 mm×450 mmのガラス基板に対応した。
図1にPanel Printer model 4500のシステム概観と露光システムを示す1)。露光システムは,図1の⑦PLATE HANDLER(SEND SIDE)にあるガラス基板が,中央の露光エリアに移動されて露光が行われる。露光後のガラス基板は,左側の①PLATE HANDLER(RECEIVE SIDE)に移動される。露光エリアでは,光源用電源②ILLUMINATOR POWER SUPPLYと,電源制御ユニット⑥ELECTRONICS CONTROL RACKによる電流を,左右の光源③ILLUMINATORに供給し,設定した光強度分布となった光束をレチクルライブラリー④RETICLE LIBRARY/CHANGERを通過して6軸のアライメント機能付きレチクル⑤RETICLE CHUCK WITH 6 DEGREES OF FREEDOMに照射する。レチクルを出たパターン化された光束は,光束に対して45°の平面ミラーによりプロジェクションレンズ⑧PROJECTION LENSに導入される。プロジェクションレンズで倍率を1/2に縮小された光束は,外部と独立した構造体⑩ISOLATION LEGS上のX/Y軸可動ステージ⑪X-Y STAGE状に置かれたガラス基板に照射される。
次にPanel Printer model 4500の光学システムの概要を図2に示す2)。ILLUMINATORからの光束はMASKING APERTUREによって矩形に加工された後,レチクルライブラリーに投影される。レチクルライブラリーには4枚のレチクルが用意され,プロジェクションレンズの筐体に付属するレチクルアライメントチャックに装着されたレチクルに照射される3)。実際の露光ステップでは,レチクルを交換しながらガラス基板全体を露光するため,レチクルの交換は高頻度で行われたものと推定される。レチクルの交換に要する時間は10秒である。
図3は,1対のプロジェクションレンズによる400 mm×400 mmのガラス基板に対する露光プロセスの例を示す4)。露光プロセスは2対のプロジェクションレンズによる同時露光である。図3においては,R1とL1の領域に対して,左右のレンズによる1回目の露光が行なわれた後,2回目の露光はX/Y軸可動ステージを50 mmのインターバルで移動させ,(R2,L2)が露光される。以後(R4,L4)を経て,所謂一筆書きにように,X-Yステージをステップ移動させて露光し,最終的にガラス基板全面を露光する。Panel Printer model 4500で採用されたプロジェクションレンズの直径は80 mm径で,露光領域は50 mm角である。各プロジェクションレンズの距離は200 mmである1)。400 mm×400 mmのガラス基板への露光は,64の露光領域(8行×8列)に対して,32回の露光が行われることになる。
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