フラットパネルディスプレイ用露光装置の概要


1. フラットパネルディスプレイ製品の開発

フラットパネルディスプレイ(FPD)は,小型画面のスマートウォッチやスマートグラスや,中型のスマートフォン等,ノートPCやモニターといったパソコン関連,更に大型のTVや大型デジタルサイネージまで非常に幅広い製品に採用されている。FPD製品は,およそ1985年から市場に登場した。図1は1985年から2020年にかけて開発されたFPD製品とガラス基板面積の推移を示す1)。なお,FPD製品の市場投入時期は情報の定義が明確ではないので厳密ではない。図1から,画面サイズが次第に大型化していることが大まかにわかる。また画面サイズの拡大に伴って,ガラス基板のサイズ(面積)も2000年後半から急速の大型化している。

図1 フラットパネルディスプレイの開発(筆者作成1))
図1 フラットパネルディスプレイの開発(筆者作成1)

2. フラットパネルディスプレイ用露光装置の開発

2.1 半導体用露光装置からの開発

図1で示したFPD製品は,液晶(LCD)や有機EL(OLED)を,ガラス基板上に形成したTFT(Thin Film Transistor)で駆動する方式が一般的である。TFTは半導体製品を製造する際に用いられるフォトリソグラフィー技術によって製造される。その際に極めて重要なプロセスとして,パターン転写技術としての露光技術が挙げられる。

1985年代は半導体用露光装置として,ステッパータイプやミラープロジェクションタイプの露光装置が既に存在していた。図2は1978年〜1985年までの量産用ステッパーとミラープロジェクションと呼ばれる露光装置の露光フィールドと対象ウエハサイズを示す2)。FPD用露光装置はこの半導体用露光装置を基礎として装置開発がなされた。その開発目的の一つは,相対的に大きなガラス基板サイズへの対応である。1985年までの半導体用露光装置が対象としていたシリコンウエハは,100 mmφ〜150 mmφであった。このサイズは4”〜6”のガラス基板に相当する。1985年当時のガラス基板は第1世代と呼ばれ,代表的なサイズは300 mm×350 mmであり,シリコンウエハの約6〜13倍の面積に相当した。そのため,半導体露光装置に比べて極めて大きな面積に露光が可能な装置が必要となった。

図2 1985年前後の半導体用露光装置の露光フィールドとウエハサイズ(筆者作成2))
図2 1985年前後の半導体用露光装置の露光フィールドとウエハサイズ(筆者作成2)

また露光フィールドの拡大も必要となった。図2から,半導体用の露光フィールドは10 mm角〜15 mm角であることがわかる。半導体用露光装置が対象としていた半導体製品は1 Mb DRAMや386 CPUであり,それらのサイズは70 mm2〜100 mm2で,露光フィールドに対してせいぜい7〜10倍程度だった3)。一方第1世代の300 mm×350 mmサイズのガラス基板から作製されるノートパソコン(当時はラップトップパソコンと称する)用のLCDパネルサイズは,少なくとも8.4”(256 mm×341 mm)のサイズで1),この面積を半導体用露光装置で露光するには,計算上少なくとも800回を超えるショットが必要となった。更に,露光フィールド内にパネルサイズが入らない場合は,パネル内で分割露光となり,パターン繋ぎ合わせ精度が問題となり,高速なステップアンドリピートによる高精度な繋ぎ合わせが求められた。

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