5. おわりに
本稿では,眼への安全性が高い波長2 μm帯の赤外線レーザー光を用いた,大気中の水蒸気量と風速が計測可能なMP-DIALの原理,観測装置,観測結果や現在の開発状況について紹介した。現在,社会実装に向けてMP-DIALの各構成要素の高性能化,安定化と低価格化のための開発を進めている。
今後は,風と水蒸気に加えて,豪雨発生の重要な要素である気温も計測可能である進化したMP-DIALの開発も計画している。気温を測定可能なMP-DIALの実現には送信光の波長を3つ以上用いる多波長化技術が必要になる。MP-DIALにより風,水蒸気,気温の空間分布と時間変動を観測できるようになれば,豪雨の予測精度向上に大きく貢献できると考えている。
謝辞
MP-DIALの開発は,日本学術振興会科学科研費助成事業(19K15471,22K04978)の支援を受けている。
参考文献
1)M. Aoki and H. Iwai, “Dual-wavelength locking technique for coherent 2-μm differential absorption lidar applications,” Appl. Opt. 60, 4259-4265 (2021).
2)H. Iwai and M. Aoki, “Evaluation of a coherent 2-μm differential absorption lidar for water vapor and radial wind velocity measurements,” Opt. Exp. 31, 13817-13836 (2023).
3)K. Mizutani, et al., “Diode-pumped 2-μm pulse laser with noncomposite Tm,Ho:YLF rod conduction-cooled down to –80℃,” Appl. Opt. 54, 7865-7869 (2015).
4)K. Mizutani, et al., “2 μm Doppler wind lidar with a Tm:fiber-laser-pumped Ho:YLF laser,” Opt. Lett. 43, 202-205 (2018).
■Laser remote sensing for atmospheric environment monitoring
■①Makoto Aoki ②Hironori Iwai
■①National Institute of Information and Communications Technology, Remote Sensing Laboratory, Radio Propagation Research Center, Radio Research Institute, Senior Researcher ②National Institute of Information and Communications Technology, Remote Sensing Laboratory, Radio Propagation Research Center, Radio Research Institute, Research Manager
①アオキ マコト
所属:(国研)情報通信研究機構 電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター リモートセンシング研究室 主任研究員
②イワイ ヒロノリ
所属:(国研)情報通信研究機構 電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター リモートセンシング研究室 研究マネージャー
(月刊OPTRONICS 2024年2月号)
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