4. サブミクロン分解能量子光コヒーレンストモグラフィの実証実験
上記のように発生した超広帯域量子もつれ光を用い,名古屋大学西澤典彦教授との共同研究により,量子OCTの分解能として0.54μmという超高分解能に対応する二光子量子干渉実験に知る限り初めて成功した7)。実験系を図3に示す。波長401 nmのポンプ光により,チャープ分極反転光デバイスから量子もつれ光となる2つの光子を発生させ,二光子量子干渉計に導入した。
分散による影響を検証する場合には,サンプルとして厚さ1 mmの水を,一方の経路に挿入した。出力された光子を検出するために,2つの広帯域光子検出系を構築した。それぞれは,可視領域用のSiアバランシェフォトダイオード(APD)検出器と赤外領域用のInGaAs APD検出器を併用することで,検出帯域の広帯域化を実現した。また比較対象としてOCT実験系も構築しており,光源として量子もつれ光の一方の光子を用いることで,同じ帯域の光源による分解能比較を可能にした。
実験結果を図4に示す7)。図4(a)は,OCT実験系により得られた干渉縞で,横軸は光路長変化,縦軸は規格化された干渉光強度を表す。OCTの深さ分解能に対応する干渉縞の幅は1.5μmとなった。次に,経路に1 mm厚の水サンプルを挿入した場合の結果を図4(b)に示す。水の群速度分散の影響で,干渉縞は著しく拡がり,分解能は1.5μmから7.8μmへと大きく劣化した。
このような分散による分解能低下は,眼底測定などの生体イメージングにおいて大きな問題となる。図4(c)に,量子OCT実験系により得られた,量子もつれ光の2光子量子干渉によるディップ信号を示す。横軸は光路長変化,縦軸は同時計数を示す。量子OCTの深さ分解能に対応するディップ信号幅として,0.54μmが得られた。この値は低コヒーレンス光干渉幅(1.5μm)に比べて著しく向上しているが,これは量子OCTの利点である分解能向上性によるものであり,周波数スペクトルから予測される向上係数は約2倍である。