これは,通常の光の干渉とは異なる量子光学的な現象で,ビームスプリッタに2つの光子が同時に入射した場合,2つの光子が同じ側に必ず揃って出力されるというものである。この時,ビームスプリッタの後方に設置した2つの単一光子検出器において,同時検出事象が計数(同時計数)されることはない。
一方,2つの光路長に差がある場合には,各光子は確率的にビームスプリッタの2つの出力側から出力されるため,一定の同時計数が得られる。量子OCTはこの性質を利用しており,参照側の遅延ミラーを掃引しながら同時計数し,ディップ信号の位置を検出することで,サンプル内での光の反射位置(=被測定物の位置)を知ることができる。OCT同様,干渉信号の拡がり(ディップの半値全幅)が分解能に対応し,光源である光子が広帯域であるほど高分解能となる。
量子OCTはOCTと比較して,2つの大きな利点を持つ。1つ目は分解能向上で,同じ帯域の光源で比較したときに,より高い分解能を持つ。光源のスペクトル形状に依存するが,最大で2倍向上することを我々は明らかにしている12)。2つ目は分散耐性で,OCTで問題となる群速度分散(および全ての偶数次分散)による分解能低下が,原理上ない13, 14)。これは量子OCTの際立った特長である。これら2つの利点は,量子もつれ光による二光子量子干渉という,量子光学的現象の性質によるものである。