2. 広視野レーザ顕微鏡とその観察例
図1の太枠で囲った部分が広視野レーザ顕微鏡である。光路の概略を示すと,レーザ光はレーザ半導体から射出され,コリメータレンズで並行光束となり,ビームスプリッタと1/4波長板を通って円偏光となる。その後,回転ミラー,fθレンズを通って結像する。このfθレンズはテレセントリック性を有するため,回転ミラーの角度が変わってもfθレンズを通った光線同士は互いに平行であり,約30 mm先の位置に集光する。
回転ミラーの回転速度は9000 rpmで1回の走査に要する時間は0.2 ms程度である。回転ミラーによるx方向の走査と,直動ステージによるy方向(同図で紙面垂直方向)を組み合わせることで2次元的に走査させることが可能である。その後,元の光路を戻り受光素子によって輝度が電圧信号に変換される。一回の観察視野は(走査幅)×(送り量)となり通常10 mm×8 mmとしているがy方向の送り量は容易に増減できる。
なお,この顕微鏡には接触面剛性の研究から生まれたシュリンクフィッタ技術を用いたfθレンズを用いており2),走査幅全域でレーザスポット径を約2 μmまで絞り込むことが可能となっている3)。広視野かつ高分解能な観察が可能である画像の例として,図2に示す500円硬貨の観察例がある4)。この例では図1においてRef. plateとConcave Specimenと示されている部分に,500円硬貨をセットした場合である。500円硬貨に刻印されているマイクロ文字は,髪の毛の直径(約80 μm)程の大きさであるが,視野が同倍率の顕微鏡の400倍であるため容易に見つけられる。
仮に通常の光学顕微鏡でこのマイクロ文字を探す場合,広範囲の繰り返し計測や画像接続作業が必要であるが,本手法では1度の観察で取得できる。なお,ガスケット5),プリンタ用のゴムローラ6)やサーマルヘッド7)などの実用的な観察例も報告しているが,本稿では身近な分かりやすい例として500円硬貨を示した。