スマートフォンやウェアラブルデバイスの普及に伴い,AR技術の関心が高まっている。さらには5G通信の導入やAIの精度向上もあり,AR技術はコンテンツとともに進化を続けている。
AR技術関連市場も拡大基調にあるが,普及に向けての課題はいくつかある。コストや電力消費,環境認識の精度などが挙げられる。またコンテンツ不足も指摘されている。しかしながら,ARディスプレーなどハードウェア面から開発は活発化しており,技術的な課題解決に向けたアプローチで開発が続けられている。

ARスマートグラスなどでは軽量化,消費電力の低減が求められるが,最近の成果では東京大学と大阪大学の共同研究グループが開発した『電源不要の次世代ARディスプレー技術の開発』が興味深い。実際のところでは電源を不要にすることを目指しているとしているが,現在のメガネ型ARデバイスは表示素子や計算ユニット,バッテリーなどが本体に内蔵されているため,装着感や性能向上に限界があるとされている。
研究グループはプロジェクターから映像を受け取るだけの表示技術『Beaming Display』に対応する薄型受光系を開発し,軽量化を実現。具体的には回折グレーティングを活用した光学設計により,実用性も向上させたという。(月刊OPTRONICS編集長 三島滋弘)