東京大学と日本電信電話(NTT)は,世界最速の光量子もつれの生成・観測に成功した(ニュースリリース)。
量子技術の応用の多くは量子もつれが基本的なリソースとなっているが,量子もつれを評価するときは,量子もつれの純度に加えて,その生成速度も重要なパラメータとなる。特に量子計算や量子通信などの量子情報処理の応用においては,リアルタムに高速な量子もつれを生成し測定する必要がある。
この時間スケールは量子システムが用いる物理系のキャリア周波数によって決まっており,その中でも特に数百THzのキャリア周波数を持つ光の系は,最も高速な量子もつれ生成が期待される物理系となっている。
しかしながら,従来は技術的制約によって多くの光量子もつれはMHzオーダーに留まっており,実用に耐える高速性は実現されていなかった。量子計算の応用では,生成速度が量子計算器のクロック周波数を制限するため,従来の生成速度では現状の古典コンピュータのクロック周波数であるGHzよりも遅い量子計算システムしか実現できなかった。
そこで研究グループは,THz帯域の光パラメトリック増幅器(OPA)を光源として使用した。またこの光源と,OPAを補助的に用いた超高速リアルタイム測定を組み合わせることで,超高速な量子もつれ生成及び測定を実現した。測定で用いられたOPAは光源のOPAと全く同じタイプだが,測定においては光のある位相の振幅情報を劣化なく増幅するものとなっている。
この増幅した信号を光通信用の高速受信器で測定するこの手法は,研究グループによって実験的に確立されたもの。この研究では,複数台の高速測定システムの位相同期手法を新たに開発し,2者間の量子もつれ状態の高速リアルタイム測定に初めて応用した。これらの測定システムの同期には,NTTの有する特性のそろったOPAの安定作製技術が重要な役割を果たしているという。
測定の結果,2モードの測定結果がピコ秒スケールの相関を有していることが読み取れた。従来の量子相関測定の典型的な時間スケールはナノ秒程度で,桁違いの高速化に成功したことがわかった。
また,2モード間の相関が量子的な相関であることを確認するために周波数領域の解析を行なった結果,ショットノイズレベルと呼ばれる古典相関の限界を下回る相関の存在が示唆され,古典物理では説明できない量子もつれを60GHzまでの全帯域で観測したと結論付けた。
これは従来の量子もつれ測定の1000倍以上の高速化に成功したもので,60GHzの光量子計算が実現可能となるもの。研究グループは,次世代の超高速光量子技術の基盤技術になるものだとしている。