三菱電機,理化学研究所,自然科学研究機構分子科学研究所(分子研)は,強力な短パルスで世界最高クラスの出力である235ミリジュールを実現した,サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置の開発に成功した(ニュースリリース)。
新材料や新薬の開発,粒子線がん治療などに使用される加速器は,電子や原子などに強い電界を加えることにより粒子の動きを加速させる装置で,粒子が人体や物体の深部まで到達するという特性を活用している。
しかし,加速器は大型の装置が必要となることから,この小型化を実現するためのレーザー加速技術の研究が世界各国で行なわれている。一方で,レーザー加速には高出力のレーザー装置が必要となるため,レーザー加速が実現した場合でもレーザー装置自体が大きくなり,結果的に加速器全体としては大型化してしまうという課題があった。
また,レーザー加工やセンシングなどの分野で幅広く活用されているレーザー装置は,装置の大きさやコストが導入にあたっての課題となっている。さらに,核融合の分野でもレーザー技術に注目が集まっているが,レーザー核融合プラントの建設コストの大半がレーザーになるとの試算もあり,小型化・低コスト化が求められている。
このように,高出力レーザーの小型化・低コスト化は,加速器の小型化やレーザー加工の高度化,核融合応用において重要な技術課題となっている。
同社は今回,短パルスのマイクロチップレーザーを採用し,ビーム径を最適化することで,サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置において世界最高クラスの出力である235ミリジュールを実現した。
また,理化学研究所および分子科学研究所との連携により開発した分布面冷却(Distributed Face Cooling)の技術を使用した高排熱チップを採用することで,従来,低温冷却が必要だった高出力レーザーの常温での動作を可能とし,装置のサイズを小型化したという。