神大ら,レーザーでリポソームを捕集・分解・分析

神奈川大学と大阪公立大学は,3本のレーザー光を用いて光分解性マイクロカプセルからの分子放出を単粒子ごとに分析する手法を開発した(ニュースリリース)。

リン脂質からなる球形状の微小胞体(リポソーム)は薬剤分子を封入できるマイクロカプセルとして利用できる。さらに光や温度,溶媒などに応答する機能性分子をリポソームに付与することで,外部刺激に応じて薬剤分子を放出するドラッグデリバリーシステムのカプセル剤として研究が進められている。

この外部刺激に対する分子の放出速度は,カプセルの大きさや化学組成などの物性に依存する。しかしながらリポソームを作製すると大きさや化学組成にバラツキが生じる。そのためこれまでの分析手法では,放出速度をリポソーム集団の平均値として評価してきた。

研究グループでは,3本のレーザー光を駆使し,光分解性リポソーム一粒を捕まえて,壊し,分析することで,粒径と放出速度を単粒子レベルで決定する手法を開発した。1本目のレーザー光は捕まえる役割を担う。

溶液中に漂うマイクロメートルサイズの微粒子を非破壊・非接触で捕まえる手法は光ピンセットと呼ばれる。2018年のノーベル物理学賞の受賞テーマの一つでもある。2本目のレーザー光は壊す役割を担う。

今回,金ナノ粒子と薬剤モデルとして蛍光分子を内包したリポソームを作製した。このリポソームにパルスレーザー光を照射すると,金ナノ粒子が過熱されリポソームを分解させることができた。そして,3本目のレーザー光は観る役割を担う。

壊れていくリポソームの蛍光スペクトルを連続で取得することで,蛍光強度の経時変化から分子放出速度を決定することができた。この分析手法によりリポソームの大きさに対する放出速度の依存性を単粒子レベルで分析することができた。

研究グループは,今後,さまざまなマイクロカプセルの単粒子分析を展開し,物性と関連付けて分子放出メカニズムの解明に役立つ可能性があるとしている。

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