森林総研ら,防風林の効果をLiDARセンサーで可視化

森林総合研究所(森林総研),北海道立総合研究機構,農業・食品産業技術総合研究機構,京都府立大学,苫小牧工業高等専門学校は,ジャガイモ畑の畝の高さを指標とすることで,防風林が土壌侵食を防ぐ効果(風食防止効果)を高精細かつ簡便に可視化できることを明らかにした(ニュースリリース)。

防風林の効果把握では,ドローンのように遠隔から観測する手法(リモートセンシング)であれば,少ない労力と時間で広い範囲を計測できるため,条件の異なる様々な畑での効果把握に使える可能性がある。

しかし,この手法では侵食前後の二度,畑全体の地表面の地形を極めて正確に測量し,緯度経度が同じ地点の標高変化を算出する必要があり,その困難さから,農地の土壌侵食に対する防風林の効果の観測には用いられてこなかった。

防風林の風食防止効果を可視化するため,研究グループではジャガイモ畑の畝に着目した。ジャガイモ畑では,培土を行ない等間隔で列状に畝を作り,畝の中に種イモが植えられる。畝は農業機械を用いて同じ高さ・形で作られ,風によって侵食された部分は高さが低下する。

そこで,畝の高さを侵食の程度を表す指標とした。これまでリモートセンシングでは,風食の前と後の二回,絶対座標(緯度,経度,標高)を厳密に測定し,風食前後の標高差を算出する必要があった。

それに対し,畝の上部と下部の差という相対的な高低差の計測で,なおかつ畝上部の侵食と畝下部への堆積を合わせて評価できる畝の高さを侵食の指標とすることで,場所による侵食量の違いを検出する際に絶対座標の誤差による影響を軽減できた。さらに,防風林で守られた畝と守られなかった畝を,強風後に一度調査するだけでも,防風林の効果を評価できるようになった。

防風林が設置されたジャガイモ畑において,2022年5月に観測した結果,4月下旬に畝が作られた後,強風による土壌侵食が起こった。ドローンによる調査から,防風林によって風速が低下した場所で畝の高さが高く,侵食が防がれたことを明瞭に可視化できた。

より簡便な手法として,レーザースキャナを搭載したiPadやiPhoneを使えることもわかった。iPadのLiDARセンサーを畝に向け,無料のアプリで畝の高さを計測するだけで,防風林による畝の侵食防止効果を可視化できた。

防風林によって畝の侵食が防がれたことは,表土が畑から失われずに済んだだけでなく,ジャガイモの緑化を防ぎ農業生産に役立ったことも示した。

研究グループは,この手法のように簡便な調査により,強風時の効果をわかりやすい形で記録し伝えることで,防風林の効果の理解促進につながるとしている。

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