関⻄医科⼤学は,光免疫療法における新たな光照射⽅法として,側⽅へ近⾚外光を照射するレーザーファイバーの有効性に関する基礎的検討を⾏ない,光免疫療法⽤として⼗分な効果を発揮すること,狭い空間の腫瘍に均⼀に光を照射することが可能であるという研究結果を発表した(ニュースリリース)。
光免疫療法とは,近⾚外光に反応する光感受性⾊素(IR700)とがん細胞に特異的に結合する抗体の複合体薬を投与し,薬ががんに⼗分集まったところで,がんに対してレーザー光をあてることで治療する,新しいがん治療法。
体表⾯にある腫瘍に対しては光を前⽅に照射するフロンタルディフューザーを使⽤し,深部にある腫瘍の治療では,針のついたカテーテルを腫瘍に刺し,カテーテル内部に光ファイバーを挿⼊して腫瘍内部から光を照射するシリンドリカルディフューザーを使⽤している。
しかし,この 2 種類のディフューザーでは,喉の奥側のような狭い内腔に位置するがんへの照射が困難であり,また将来的に様々な部位のがん(例えば⾷道がん)の治療に光免疫療法を適応するためには,狭い空間において照射可能な⼿法が必要となる。そこで,光を側⽅に照射する光ファイバー(Lateral Emitting Laser(LEL)ファイバー)を⽤いた光免疫療法の有効性を検証した。
臨床で使⽤されている光免疫療法薬剤と同様に,がん細胞に発現しているEGFRに結合する抗体セツキシマブに IR700 を結合させた薬剤(IR700-抗体複合体)を⽤いて実験を⾏なった。がん細胞に対して薬剤を処理し,LELファイバーを⽤いて光を照射したところ,光照射量依存的に細胞が死滅することが⽰された。
また,がん細胞を⽪下移植したマウスに対してLELファイバーを⽤いた光免疫療法を実施したところ,がんの増殖を抑制した。以上の結果から,LELファイバーを⽤いた照射は従来の光免疫療法と同様にがん治療に有効であることが⽰された。
次に,⾷道がんのような狭い内腔に位置するがんに内視鏡を⽤いて照射することを想定し,内腔20mmの筒の中から従来型のフロンタルディフューザーおよびLELファイバーを⽤いて⽪下移植したがんに光照射を⾏なう実験モデルを⽤いて光照射実験を⾏なった。
がん組織に対する光の透過性を蛍光観察により評価した結果,LELファイバーはフロンタルディフューザーに⽐べてより均⼀にかつ深部まで光を届けることができることが明らかとなった。これらの結果から,LELファイバーを⽤いた側⽅への光照射は狭い場所での光免疫療法を⾏なう際に有⽤であることが⽰唆された。
研究グループは,光免疫療法における光照射の新たな選択肢としてLELファイバーを⽤いた側⽅照射が有⽤であることを⽰した。この研究は,今後の光免疫療法の発展および適応拡⼤に役⽴つことが期待されるという。