宇大ら,EUV光源を効率化するレーザー照射法を開発

宇都宮大学,東京大学,九州大学,理化学研究所,米パデュー大学,アイルランド国立大学ダブリン校,広島大学は,極端紫外(EUV)光源を高効率化するためのマルチレーザービーム照射法を提案し,EUV光源を高効率化できることを実験的に実証した(ニュースリリース)。

先端半導体のさらなる性能向上に向け,EUV光源の高出力化には①駆動用レーザーの消費電力を下げることと②EUV光源の高効率化が必要とされている。

EUV変換効率がCO2レーザーと同等で,電気―光変換効率が高いことから,波長約2mの固体レーザーを使うことが提案されているが,このレーザーをパルスかつ数10kHzで連続稼働させるときの出力は100Wに満たず,CO2レーザーのように数10kW級にするのは難しい。また,固体レーザー結晶や光学素子の損傷といった課題もある。

今回,研究グループは,レーザー装置1システムあたりのパワーが1kW級であったとしても,複数レーザー装置,複数レーザービームを同時にターゲットに集光照射することでEUV変換効率を増加できることを実験的に原理実証した。

今回の成果は以下のとおり。
・EUV 光源の駆動用レーザーの入射する1回あたりの全照射エネルギーを500mJ,1パルスあたりのレーザー強度(パワー密度)を2×1011W/cm2としてスズプラズマを発生させると,1ビーム(500mJ/pulse)だけの高エネルギーパルスを照射するときよりもビームを分割したほうがEUV変換効率が高くなることがわかった。

・2ビームに分割し(1パルスあたりのエネルギー:250mJ/pulse),スズターゲットへの入射角を60にすることで,EUV変換効率を4.7%に改善した。これは,波長1mのナノ秒固体レーザー(Nd:YAGレーザー)をSn平板に照射したときのEUV変換効率の最高記録。

・2ビーム〜5ビームまで分割し,レーザーパルスのスズターゲット入射方向を変化させた。いずれの場合も1ビームだけを照射するときよりもEUV変換効率は2.4%〜4.7%増加した。

・レーザービームを複数個用意するとき,1台のレーザー装置のビームを分割する必要はなく,複数台の出力エネルギーの小さなレーザー装置からレーザービームを照射すればよいこともわかった。

・複数のレーザービームを入射しても,それぞれのレーザー強度を同じにすることで生成されるプラズマ状態はほぼ同じであることもわかった。

なぜこのようになるのかの詳しい物理は不明なことも多いものの,研究グループは今後,高繰り返し動作での多重レーザーパルス照射が将来の露光ツールの革新的技術になり得るとしている。

その他関連ニュース

  • OIST,ミラー数を減らしたEUVリソグラフィーを提案 2024年07月30日
  • 九州大,EUV光照射と解析評価を実施する会社を設立 2024年07月29日
  • TEL,EUV露光によるガスクラスタービーム装置発売 2024年07月10日
  • 信越化学,半導体パッケージ基板製造装置と工法開発 2024年06月20日
  • 三菱ケミ,EUV向け感光性ポリマー生産能力を増強 2024年06月17日
  • 三井化学, EUV露光用CNTペリクルの生産設備を設置 2024年06月03日
  • ラムリサーチ,パルスレーザー成膜装置を発売 2024年04月02日
  • ギガフォトン,最新ArF液浸光源機種を出荷 2024年04月02日