京大,光で「超原子分子」金属ナノクラスターを創出

京都大学の研究グループは,価電子が閉殻な電子配置を有することから「超原子」と呼ばれる金属ナノクラスターが光照射によって融合し,二つの超原子間に三重結合を有する窒素分子のような電子配置を有する「超原子分子」と呼べる新奇な金属ナノクラスターを与えることを見出した(ニュースリリース)。

金属ナノクラスターは価電子が原子核に類似した殻に収容されることで安定化することから、超原子と呼ばれており,その特異な電子構造に基づいて単一の金属イオンでは見られない様々な物理的・化学的特性を示すため,様々な応用研究が行なわれている。

金属クラスターには様々な形状のものが知られているが,中には金属クラスター同士が連結したような異方的な構造を有するものもあり,原子同士が結合して分子を作るように,超原子同士が結合した超原子分子と見なすことができるが,超原子同士の多重結合に関する知見はこれまで無かった。

研究グループは,ホスフィン,および塩素配位子で保護された正二十面体のPdAu12ナノクラスターに可視光を照射することで,二つの金属ナノクラスターが融合したPd2Au17ナノクラスターが得られることを見出した。

この反応はパラジウムと同属の白金を中心金属として有するナノクラスターにおいても進行し,対応するPt2Au17クラスターが得られ,このクラスターは二つのMAu12クラスターが5つの金原子を共有する形で融合した構造を持ち,二つのMAu12クラスターが強く結合していることが示唆された。

また,フロンティア軌道において二つのMAu12クラスターの超原子軌道が線形結合することで,窒素分子と同様の1つの∑,2つのΠ性の超原子分子軌道が形成された三重結合性を有する超原子分子であることが分かった。

さらに,同様の対称性を有するΠ性の超原子分子軌道間では強い電子遷移が起きるのに対し,異なる対称性を有するΠ性の超原子分子軌道間では極めて弱い電子遷移しか起きないことが分かった。

これまでに知られている超原子分子はΠ性の超原子分子軌道間の電子遷移が起きないフッ素型の電子配置を持つものだけだったことから,今回,超原子分子が通常の分子と同様に,軌道の対称性に依存した電子遷移挙動を示すことが初めて明らかになった。

研究グループは,今後,様々な金属の組み合わせや超原子の多重連結によって金属ナノクラスターを基盤とする新たなΠ電子系材料の創出につながる成果だとしている。

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