昨今,自動車において多数のLEDを集積したチップによるあらたなAdaptive Driving Beam(ADB)の開発が目立っている。今回,人と車のテクノロジー展2024(5月22日~24日 パシフィコ横浜)にて,LEDを用いたADBを取材した。
市光工業は,「先進安全ヘッドランプ」を展示した。数万ピクセルに分割されたLEDを照射範囲ひとつひとつを個別に制御するHDライティング技術を研究している。
また,親会社仏Valeoの製品であり,中国のEV「ZEEKR 007」に搭載された「LEDデジタルパネル搭載フロントライティング」 を展示した。この製品は,レンズ高さ15mmの超薄型バイファンクションヘッドランプユニットと,1,700個以上のマイクロLEDで構成された2つのデジタルパネルを備えている。
これによりADB機能を実現し,様々な運転環境におけるドライバーの視認性向上や運転サポートで,夜間運転時の安全性を高めるとしている。
最新の技術要素がシームレスに統合されたフロントマスクにより,従来のライティングデザインにとらわれることなく,細かい柄や文字などユーザーに最適化された照明デザインを表示することができる。また,この超薄型バイファンクションヘッドランプユニットは,2023Automotive News PACE賞の最終選考に残った。
小糸製作所は,精細ADBを展示した。日亜化学工業のマイクロLEDを採用しておりLED素子は約16,000個(256×64)搭載されている。
1粒単位で点消灯することで緻密に光をコントロールし,道路環境に合わせて,縦横さまざまな光のパターンを照らすことが可能となる。また,樹脂製のレンズであることからコスト減にも繋がっている。
これにより前方車両の遮光範囲の最小化に加え,歩行者や標識に対しては減光し,眩しさや反射光のぎらつきを抑えるなど,全ての交通参加者に配慮しながら,ドライバーとカメラの両方に最大限の視界を提供するとしている。
独ams-OSRAMは,LED-Arrayチップの「EVIYOS」を搭載したヘッドライトを模擬したデモを行なった。25,600個(320×80)のLED素子をわずか40mm2の実装面積に収めたデバイスであり,現在はヨーロッパを中心に,ドイツなどの車に搭載されている。
現在,ヨーロッパでは路面にシンボル描画できるライトが搭載されている車も出始めているが,日本では法規で認められておらず,ADBとして普及を目指している。(中山朝葉)