東北大学と筑波大学は,流通式超臨界水熱合成法における反応制御・高度化を研究し,反応時間を変える簡便な操作により1~10nmの金属酸化物ナノ粒子を精密に合成する手法を開発した(ニュースリリース)。
金属酸化物は,金属と比較してナノ粒子合成が難しく,特に5nm以下の超微細粒子の合成は困難で,これまで達成されていなかった。さらに,金属酸化物は金属と酸素の強い相互作用により,金属とは異なるナノサイズ効果を示すことが想定されていたが,検証はできていなかった。
研究グループは,流通式超臨界水熱合成法による有機修飾金属酸化物ナノ粒子の合成過程での反応機構の理解に取り組み,1~5nmの超微細金属酸化物粒子を短い反応時間(40ミリ秒〜380秒)で精密に制御して合成する手法の開発に至った。
なおこの手法は,反応率が高く,原料の高濃度化が可能で,連続的に合成できることから,大量合成にも展開できる手法となっている。今回研究グループでは,放射光X線回折データを詳細に解析するとともに,ナノ粒子の大きさに応じて構造がどのように変化するかのシミュレーションを行なったところ,超微細粒子は積層欠陥を含んでいることを突き止めた。
これにより,流通式超臨界水熱合成法では粒子が融合成長を起こしながら高速成長し,超微細粒子を形成することを明らかにした。さらに放射光軟X線分光により,流通式超臨界水熱合成法で得られた粒子の電子状態と局所構造を精密に解析したところ,2nm程度までナノ粒子化したCeO2では酸素の格子位置が乱雑化しており,そのため,酸素欠陥をともなわずCe4f電子が局在化し得るという,構造歪が誘起する特異な電子状態をとることを初めて発見した。
今回の研究で開発された超微細粒子の精密・大量合成手法は,CeO2以外にZrO2やその複合酸化物など,様々な金属酸化物に適用することが可能となっている。さらに,今回発見した,酸素欠損をともなわず構造歪が誘起する特異な電子状態をとることという超微細粒子の特長は,従来の酸化還元能を超える新たな機能を有し得ることを示している。
研究グループは,今後,サイズを精密制御した超微細粒子を用いた新たな機能性材料の開発が進むとともに,光学材料,磁性材料,高機能触媒など様々な分野への応用が期待されるとしている。