横河電機は,最新1細胞分析ソリューションである「Single Cellome System SS2000」が,英サリー大学の研究者によるシングルセル(単一細胞)リピドミクスという新しい分野における画期的な研究に使用され,その論文が学術誌「Analytical Chemistry」に掲載されたと発表した(ニュースリリース)。
リピドミクスとは,人体の恒常性の維持から重大な疾患の発症に至るまで,あらゆる生命活動によって生じる特異的な脂質分子の変動を網羅的に解析する研究。従来,リピドミクスは,複数の細胞をまとめて前処理し,調製された試料(バルクサンプル)を用い,リピドームの平均データを取得するバルクリピドミクスによって行なわれてきた。
しかし,この手法では個々の細胞の微妙な違いを識別することや細胞間の相互作用によって引き起こされるリピドームの空間的または時間的な差異を明らかにできないという課題があった。これに対し,シングルセルリピドミクスは,個々の細胞ごとにデータを取得し,脂質組成を分析する新しい分析手法で,細胞間差異に加え,空間的・時間的差異の探索が可能となっている。
この手法はがんなどの疾患のより包括的な理解を促進する鍵となるもの。複数の細胞をまとめて剥離,懸濁してから細い流路を通して単離する手法は細胞に大きなストレスを与え,細胞の脂質構成が変化してしまうケースがあるため,いかに細胞本来の状態を維持しつつ単一細胞をサンプリングするかという点が,研究者が直面している課題の一つとなっている。
同社の,このソリューションは生きた細胞の観察が可能な共焦点イメージング技術の活用により,懸濁工程を通さず,細胞へのストレスを最小限に抑えた,単一細胞丸ごとおよび細胞内の特定の部位や領域の全自動サンプリングを可能するとしている。
サリー大学の論文は,シングルセルリピドミクスの分野において,このソリューションを用いたサンプリングが,他の単一細胞分離技術よりも大幅に優れていることを示したとする。
同社は,今回得た位置情報・形態情報を生かした研究は,リピドミクス分野における革新的な前進であり,がん,糖尿病,心血管疾患の代替療法や治療法における飛躍的な進歩につながるとしている。