高知工科大学の研究グループは,自己組織化の手法を新たに開拓し,高い発光量子収率を有する分子材料を意図的に2次元,1次元,0次元の構造体に自己組織化させることに成功し,それらがレーザー媒質として機能することを明らかにした(ニュースリリース)。
AIやIoTの進展に伴い,近年の情報通信量は爆発的に増大しており,現在主流の電子デバイスに代わるものとして,さらに高速での情報処理が可能とされる光デバイスが注目されている。
その中でも,レーザーデバイスは,効率の良い情報通信が期待できる。特に,有機マイクロレーザーは,安価かつ簡便なプロセスで作製でき,さらに発光体とレーザー共振器が一体となっていることから,小型光通信モジュールに組み込むことができるデバイスとなる。
レーザー光を放出する媒体として,有機マイクロ結晶があるが,それらから放出されるレーザー光の放出方向は,結晶の形状に左右されるため,形状を様々に制御することが重要となっている。
研究グループは,研究を始めるにあたり,有機マイクロレーザーの機能発現が期待できる分子として,固体状態の発光が溶液状態と比べて最大140倍程度にまで増大するとされるビフェニルフロマニトリルという分子を選択した。
溶液中での再結晶法では2次元に伸びた板状結晶,KBr単結晶基板上でのエピタキシャル成長では1次元に伸びたニードル結晶,ガラス基板上での溶液揮発法では0次元に成長したマイクロドットが得られた。
有機分子は,その分子構造により,ある程度決まった形状をとって自己組織化するが,この研究では,自己組織化手法を新たに開発することによって,1種類の分子を様々な次元性の構造に成長させることができた。
その結果,2次元結晶と1次元結晶からは,光励起によるレーザー放射が観測された。その形状から,2次元結晶では等方的なレーザー放射が,1次元の結晶では一方向へのレーザー放射が起きていると考えられるという。
研究グループは,レーザー光の放出を自在に操作できるようになれば,小型かつ自己組織化のみで作製できるマイクロレーザーを用いたレーザーデバイスを小型通信モジュールに組み込むことができるとしている。