筑波大ら,光捕集機能をもつ有機結晶レーザー開発

筑波大学,神奈川大学,九州大学,東京工業大学,科学技術振興機構,産業技術総合研究所,リガク,独デュイスブルクーエッセン大学の研究グループは,光捕集機能をもつ有機マイクロ結晶レーザーの開発に成功した(ニュースリリース)。

有機マイクロ結晶は,マイクロレーザー共振器としての応用研究が活発に進められている。一方,光励起によるレーザー発振特性の発現において,発振閾値の低減は重要な課題となる。その対応として,広範囲で光エネルギーを捕集し,レーザー色素に集光することで,効率的に発光中心の励起状態を実現する方法がある。

研究グループは,炭素架橋オリゴフェニレンビニレン(COPV2)を発光中心として用い,その両端に光捕集部位として,分岐回数の異なる3種類のカルバゾールデンドロンを付与した巨大分子(G1-,G2-,およびG3COPV2)を合成した。

これらの分子について,溶液中での光吸収および発光スペクトルを測定した結果,カルバゾールデンドロンが効率的な光捕集機能をもつことを明らかにした。

これらのデンドリマーの結晶化について検討した結果,特定の溶媒条件において,いずれの分子もマイクロ結晶を形成することを見出し,有機デンドリマーとしては世界最大の分子量4,600g/molであるG3COPV2においても,高品質な単結晶を形成した。

得られた単結晶を用いてX線構造解析を行なったところ,G1COPV2においては,結晶の長軸に沿う方向にπ共役面が並ぶのに対し,G2-およびG3COPV2においては,結晶の長軸方向に対しπ共役面がほぼ直交していることがわかった。

さらに,これらのマイクロ結晶には明確な偏光依存性があることが明らかになった。特に,G2-およびG3COPV2において,カルバゾールデンドロン部分は様々な偏光面の光を吸収し,効率的にCOPV2へ光エネルギー移動することを示した。これは,「全ての方向に対して等方的な光物性を示す」という,従来のデンドリマー固体の常識を覆す新しい発見となる。

さらに,作製したマイクロ結晶をフェムト秒レーザーで光励起した結果,いずれの結晶においても,480–500nm付近に鋭く周期的な発光ピークを観測した。発光強度の励起光強度依存性プロットから,マイクロ結晶からのレーザー発振を明らかにした。レーザー発振閾値は,G2COPV2で最小値(66μJ/cm2)を示した。

このような光捕集機能をもつ有機マイクロレーザーは,レーザー発振の低閾値化をもたらすと考えられ,微小レーザー光源や,光回路,化学・バイオセンシングとしての応用が期待できるとしている。

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