東大ら,円偏光発光分子の新規合成法を開発

東京大学,東京理科大学,北海道大学,東京農工大学は,キラルな天然物骨格を基盤とした分子設計により,強力な円偏光発光を示すキラルD2対称性8の字型マクロ環を簡便に合成しつつ,芳香族クロモフォアを自在に改変できるモジュラー式合成プラットフォームを開発した(ニュースリリース)。

近年,大きな異方性因子(glum)を示す有機分子としてキラルD2対称性8の字型分子が注目されており,ビナフチルやヘリセンなどのキラルC2対称性芳香族化合物を構築ブロックとした合成研究が盛んに検討されている。

しかし,これら従来の合成アプローチでは,光学活性な分子を得るためにキラルカラムを用いた光学分割等が必要となるケースが多い。また,優れた円偏光発光特性を有する有機分子の開発においては,8の字型分子の異方性因子(glum値)と発光量子収率(Φfl)が原理的に反比例する関係にあり,ねじれた分子のトポロジーとπ電子共役システムのサイズとの最適なバランスを見つける必要がある。

研究グループは,ロウバイ科植物から得られるキモナンチン等に代表される二量体型天然物に着目した。これらの天然物は,キラルなC2対称型二量体型含窒素縮環骨格(BPI)を有する。

この研究では,アミノ酸の一種であるL-(D-)トリプトファンからBPI骨格をグラムスケールで簡便に合成し,種々の芳香族クロモフォアを4連続の薗頭カップリング反応で一挙に連結させ,D2対称性を有するキラルな8の字型マクロ環状分子をワンポット合成で構築することに成功した。

14〜66員環構造を有する8の字型マクロ環を系統的に合成し,互いに交差する芳香族クロモフォアの角度・距離・長さを精密に制御するモジュラー式合成プラットフォームを開発した。これにより,骨格や立体化学を改変したD2対称型キラル8の字型マクロ環を自在に合成し,有機分子として非常に優れた円偏光発光効率を示す32員環マクロ環を創り出すことに成功した。

glum値はシクロヘキサン中で最も高い値(0.011)を示した。また,発光量子収率も72%まで向上し,検出可能な円偏光発光特性の指標となるBCPL値が480となり,8の字型有機分子として最大級の値を示すことを見出した。

研究グループは,入手容易なアミノ酸(L/D-トリプトファン)から両鏡像体を簡便に大量合成できるキラルなBPI骨格を基盤として,D2対称性8の字型マクロ環状分子群の円偏光発光特性を自在に改変できるこの手法は3Dディスプレーやセキュリティインク,バイオイメージング分野への応用が期待されるとしている。

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