宇都宮大学とOrbrayは,クラッドを固化する新規プロセスを開発して低損失な全固体自動光接続を実現した(ニュースリリース)。
自己形成光導波路は,光通信部品やシリコンフォトニクス部品間の簡易調心であるパッシブアライメントを実現する有望な技術として期待されている。
自己形成光導波路のシリコンフォトニクスデバイスへの実用化のためには,固体クラッドが不可欠となる。これまでクラッドを固化させる方法において,サンプル上部から紫外光を照射する方法が提案されていたが,シリコンのような細線導波路の光接続では,自己形成光導波路コア周囲の樹脂の不均一硬化収縮によってコアに不均一な応力が発生し,損失が増大するという問題があった。
今回研究グループは,こうした課題を解決するために,全固体自己形成光導波路を作製するための先進的な光伝搬型選択重合プロセスを提案・実証した。
全固体自己形成光導波路の作製には,コア径8.2μm,クラッド径125μmの標準光ファイバを用いた。実験材料は2種類の光硬化性樹脂混合溶液からなり,それぞれ異なる重合経路をたどり,異なる屈折率を有する。
クラッド固化は,光ファイバ中の短波長光の伝搬によって達成される。この技術の適用により,対向させた光ファイバ間の全固体自己形成自動光接続に成功し,波長1550nmにおいて1.0dB未満の低挿入損失を測定した。
研究グループはさらに,シリコンフォトニクスの自動光接続を達成するために,このプロセスが適用可能であることを実証した。
マルチチャネル導波路やマルチコアファイバを含む将来の超高速光通信応用を展望すると,自己形成自動光接続は,複数の導波路からのレーザー照射によってポリマー導波路を同時に作製する方法として有望。
コア形成工程とクラッド形成工程では,マルチチャネルから同時に光照射しても全体のタクトタイムは増加しないので,提案した全固体自己形成自動光接続法は,高スループットと自動光接続の点で有利となる。
研究グループは,これらの結果は,自己形成光導波路技術が将来の光電融合技術で実現されるであろう光ネットワークの接続に関連する,コストとタクトタイムの課題に対処する有力解として期待できるとしている。