東北大,ナノパラボラアンテナで光強度を1万倍増強

東北大学の研究グループは,一般的な放送衛星(BS)からの受信用アンテナの100万分の一という極めて微少なサイズのパラボラ型の金属反射面と半導体から構成される光ナノ共振器を開発し,可視光を捕集して金属ナノ粒子に集めることで光強度を4桁増強できることを,電磁界シミュレーションを用いて明らかにした(ニュースリリース)。

人工光合成の実用化が待たれているが,太陽光が単位時間あたりに単位面積を通過する光子の数であるエネルギー密度(光子束密度)は低く,複雑な反応の実現は困難とされてきた。

研究グループは,ナノ光共振器による光の集光効果を極限まで高めるため,パラボラ型のナノ光共振器を考案し,その上に金属ナノ粒子として金ナノディスクを配列した構造の光学応答を電磁界シミュレーション(FDTD法)を用いて計算した。

金属反射膜の素材として銀を,半導体層の素材として酸化ニッケルを想定したパラボラ型光共振器のサイズや,金ナノディスクの配列を変化させ,吸収スペクトルと,近接場における入射光電場振幅の増強度を計算した。

その結果,金ナノディスク単独,パラボラ型光共振器単独のいずれも,可視光領域に吸収ピークを示すことがわかった。これらを組み合わせると,吸収ピークが二つに分裂して観測された。これは,金ナノディスクのプラズモンと,パラボラ型光共振器とがモード結合し,新たなエネルギー準位を形成したことに由来する。

パラボラ型光共振器の集光効果を見積もるため,共振器上に金ナノディスクを一つ配置し,その電場振幅増強を計算した結果,共振器の半径および厚みを変化させた場合,いずれも極大値では100倍以上の電場振幅増強を示すことがわかった。

ここで,光強度はその電場振幅の2乗に比例するので,光強度としては10,000倍以上の増強効果が認められたことになる。

さらに,入射光角度を変化させた際の電場振幅増強を,従来のモード強結合を示す平面型共振器と比較すると,広い角度範囲でパラボラ型共振器の方が高い増強度を示し,太陽光のような時々刻々と位置が変化するような光源に対しても有効に働くことがわかった。

このことは,入射光角度60°のときのパラボラ型光共振器の電場振幅増強の空間分布が比較的高い対称性を維持していることからも支持される。

研究グループは,局所的な光の強度が増大すると,そこで生成する電子・正孔の数も増大するため,従来では困難とされてきた,多電子反応を推進可能な新たな光化学反応場としての活用が期待されるとしている。

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