府立医大ら,脂肪肝と明暗シフトの関係を明らかに

京都府立医科大学,立命館大学,米テキサス大学,大津市民病院は,野生型マウスを適応不能な明暗シフト環境の下47週間飼育したところ,概日リズム障害に伴う疾患の一つとして知られる脂肪肝の発症が顕著に増加すること,同じ明暗シフト環境にもかかわらず脂肪肝の病態には大きな個体差があることを明らかにした(ニュースリリース)。

深夜勤務を含むシフトワークなど,不規則な生活を余儀なくされることで,睡眠障害をはじめ,さまざまな健康問題が生じることを概日リズム障害と言う。

現在まで概日リズム障害の予防の有効な対策は非常に少なく,世界的にも重要な健康上の未解決課題の一つとなっている。

研究グループは,シフトワークを模した明暗シフト環境下でゲノム情報が均一の野生型マウスを47週間にわたり,個体ごとの体重や行動リズムを記録し,組織学的解析や遺伝子発現解析を通したマウスの個体別生体情報データセットをもとに,概日リズム障害の代表的な疾患である脂肪肝に注目し,概日リズム障害の発症のしやすさについて検討した。

その結果,同一の明暗シフト環境下の条件にもかかわらず,病理組織学的には脂肪肝がなく正常な組織像を示すマウスから顕著な脂肪肝を示すマウスまでを確認したことにより,明暗シフト環境下でも概日リズム障害の発症には大きな個体差があることがわかった。

次に体内時計の体質とも言われている概日リズムの特性に着目し,概日リズム障害の発症しやすさと個体差の関連を検討した。

個々のマウスに対し,肝臓のRNAシーケンス(RNA-seq)による網羅的な遺伝子発現解析を行ない,明暗シフト感受性遺伝子セットを抽出し,マウスのそれぞれの遺伝子発現パターン(転写シグネチャー)の類似性をもとに層別化したところ,3群に分類することができた。

病態との関連を調べたところ,脂肪肝の有病率は順に,Mild群:脂肪肝0%,Intermediate群:同67%,Severe群:同 100%と群間で脂肪肝の有病率が有意に異なり,明暗シフト環境による影響が大きい程,脂肪肝の有病率は上昇することがわかった。

つまり明暗シフト環境により,①脂肪肝の発症が顕著に増加すること,②同じ明暗シフト環境でも脂肪肝の病態には大きな個体差があることを明らかにした。さらに,③脂肪肝の発症しやすさは,明暗シフト開始前の各マウスが示す概日リズム特性の個体差(行動リズム周期やリズム安定性など,体内時計の体質)と関連することもわかった。

研究グループは,人それぞれが持つ概日リズム特性を指標として活用することで,概日リズム障害のリスク予測とその低減法の構築につながる成果だとしている。

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