2023年,偏光板の世界生産量は56,465万m2に

矢野経済研究所は,2023年下期の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

それによると,2023年の偏光板世界生産量は前年比114.3%の56,465万m2になると予測する。

2022年は巣ごもり需要の終了,景気悪化によるディスプレー不況が到来し,偏光板の世界生産量は大幅に減少した。2023年は初頭から大型TVパネルの生産量が拡大し,ディスプレーパネルメーカーから偏光板メーカー各社へのオーダー量が増加し,偏光板需要は2023年第2四半期(4~6月)から第3四半期(7~9月)にかけて好調を維持した。

中国TVパネルメーカーのみならず,台湾・日本のTVパネルメーカーの生産が拡大したことも好材料となり,大型TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーはフル稼働まで生産が回復した。実際のTV製品販売動向とは異なる動きであるが,2023年第3四半期(7~9月)まで65インチ以上の大型TVパネル生産量は拡大し,回復したことで2023年の偏光板の世界生産量は拡大する見通しだという。

しかし,その後10月より供給過剰による単価下落を防ぐために,中国TVパネルメーカーを中心としたTVパネルメーカー各社がTVパネルの生産調整に入った。そのため,TVパネル向けを手掛ける偏光板メーカーは各社により稼働率に差はあるが,2023年第4四半期(10~12月)の平均稼働率は第3四半期比約2割ほど低下する見込みであるという。

今回の調査で注目した偏光板業界では,最終的に「生産能力=価格競争力」となる。中国偏光板メーカーのShanjin(杉金光電)とHMO(恒美光電)は生産能力を拡大することで競合他社の撤退を促している。

2024年時点でShanjin,HMOの2社の偏光板生産能力は4億m2を超える見込みだという。後倒しになっていたShanjinの計3ラインが2024年より本格的に稼働するほか,HMOは昆山拠点で3,000mm幅の偏光板生産を検討しているため,2024年にはこれら2社の生産能力だけで偏光板需要の7割強をカバーできる見通だという。

中国偏光板メーカーの増設レースは止められず,2024年より偏光板業界の再編が本格化すると予測した。過激な競争環境に置かれた他の偏光板メーカーが必死にShanjin・HMOに対抗しているなか,一部の偏光板メーカーでは2024年より生産ラインの閉鎖や一部のLCD TVパネル向け事業の縮小などを選択している。また,ボリュームゾーンであるLCD TV向け市場ではなく,当面,中国偏光板メーカーが参入できない高付加価値な偏光板の販売に注力するのも一つの選択肢だとする。

将来展望については,2023年11月のブラックフライデーなどの年末年始商戦イベントでのTV製品売れ行きが,2024年の偏光板市場の立ち上がりに影響する見込みだという。

2024年は前倒し需要が見込まれる中国春節などの大型連休向けの在庫調整や,パリオリンピックなど大型スポーツイベント向けでの需要回復次第では早い段階で生産量調整が終了する可能性があるものの,現状では2023年第4四半期(10~12月)から2024年第1四半期(1~3月)の後半まで,TVパネル・偏光板双方での生産調整が続くと予測した。

TVパネル以外,IT系(モニター,ノートブック,タブレットPC)パネルや中小型パネル(スマートフォン等)の需要は2022年の大幅な減少後,2023年も回復していなかった。これらの用途向けも2024年からコロナ禍の巣ごもり特需以前の需要水準に復帰する見通しだという。

こうした状況のなかで,新製品発売に向けたTV製品やTV向けパネルの先行生産シーズンである2024年第2四半期(4~6月)から第3四半期(7~9月)に向けて,偏光板の需要は拡大を予測した。 また,ボリュームゾーンである65インチTVパネルの他,2023年下期(7~12月)より本格化した75インチや85インチパネルの生産拡大が偏光板面積の拡大に貢献することもあり,2024年の偏光板世界生産量は前年比104.2%の58,825万m2に成長すると予測した。

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