佐賀大学の研究グループは,希土類元素のユウロピウムを含んだ化合物について,独自に開発した分子構造解析ツールであるラマン光学活性分光を使った構造解析に成功した(ニュースリリース)。
希土類元素は原子番号57のランタンから71のルテチウムまでの15元素を含み,レーザー,蛍光体,強力磁石,排ガス浄化など現代社会の多様な分野で使用されている。
特にユウロピウム(Eu,原子番号63)はその発光特性から生体医学や画像検査への応用が期待されているが,これまでその特性のためラマン分光やラマン光学活性分光による分析法が適用できない問題があった。
そこで,同大が開発したラマン光学活性分光を使用し,ユウロピウムを含む複数の化合物の分子立体構造を解明することに成功した。
ラマン分光は物質に光を照射したときの散乱光を分析し,原子の振動運動を検出する技術であり,物質の詳細な構造情報を提供できる。また,ラマン光学活性分光では,円偏光を用いて通常は区別できない右手分子と左手分子を判別することができる。
研究グループは,これにより,希土類金属化合物の医療や医学研究への応用を基礎づける情報を提供し,新しい診断技術の開発に繋がることが期待されるとしている。