日本大学,核融合科学研究所,崇城大学は,ガラス管内を流れるプラズマに対して垂直方向から光渦を照射し,光渦の吸収に現れるドップラー効果の不均一性を用いてプラズマの流速を計測することに成功した(ニュースリリース)。
プラズマは原子がイオンと電子に電離した状態であり,半導体製造をはじめとする多くの産業で利用されている。また,次世代エネルギー源としてのプラズマ核融合炉の開発も精力的に進んでいる。
このようなプラズマの高度な利用において,プラズマで生成される活性種が基板に流れ込むエネルギーや,炉心から拡散する高温粒子による炉壁への熱負荷は重要な情報となる。しかし,一般的なレーザーでは光が進行する方向に沿った粒子の速度しか測定できない。
そのため,基板や炉壁に入射する粒子束に対しては,斜めから光を照射して基板や炉壁に垂直な成分を測定してきた。しかし,この方法でも確保できる光路には制限があり,測定が不可能なケースもある。このような状況から,流れ測定における光計測の自由度を拡大することが強く求められている。
研究グループは,光渦を用いた光渦吸収分光法を開発し,この課題の解決に取り組んだ。光渦はらせん状の等位相面を持ち,そのため一様な横方向のプラズマ流と等位相面との関係が場所によって異なる。
この特性を利用して,光渦と原子との相互作用におけるドップラー効果の空間変化から,横方向の流れ速度を得ることに成功した。この研究でこの技術を用いて,約50から150m/sの範囲のガス流速に対して高精度な測定が可能であることを実証した。
従来,光が進行する方向に沿った粒子の速度しか測定できないというのは一般的な認識であり,装置等の制約により光が通過できない方向の速度は測定不可能とされていた。
この研究では,光渦を用いて横方向の速度も測定できることを実証し,光の空間構造を活用することで新たな測定の可能性を開拓している。
研究グループは,今後,この手法をプラズマと物質の境界領域での粒子輸送観察に適用する予定だという。