東京大学,スイスEPFL,スイスETH Zurichは,世界初の全ペロブスカイト結晶デバイスによる電源内蔵型の超薄型光脈波センサを開発した(ニュースリリース)。
近年,超薄型で高効率な光電デバイスとして,超薄型プラスチック基板とペロブスカイト結晶を用いた超薄型のペロブスカイト光電デバイスが注目されている。
ペロブスカイト光電デバイスは,高い光電変換効率を持つペロブスカイト結晶を活性層へ用いることで,高効率の太陽電池や,半値幅の狭い鮮やかな発光を示す発光ダイオード(LED)の実現が可能。しかしながら,これまで超薄型プラスチック基板を用いた高効率のペロブスカイト光電デバイスの実現は困難であるとされていた。
これは,超薄型デバイスへ用いられるポリエチレンテレフラレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)といったプラスチック基板は,高温の熱プロセスに弱く,高効率を示すペロブスカイト光電デバイス構造を超薄型基板上へ導入することができなかったため。
研究グループは,パリレン/SU-8の積層プラスチック構造を用いた熱に強い超薄型プラスチックを基板に用いることで,世界最高効率の超薄型ペロブスカイト太陽電池・ペロブスカイトナノ粒子LEDを開発することに成功した。
開発した超薄型ペロブスカイト太陽電池は,酸化スズを下部電子注入層に持つn-i-p構造で,ガラス基板上デバイスと遜色ない効率を示し,超薄型太陽電池として世界最高効率の18.2%の変換効率を実現した。
さらにこの研究では15.2cd/Aという高い変換効率を示す超薄型ペロブスカイトナノ粒子LEDを実現した。従来の幅広い発光スペクトルを持つ超薄型有機LEDにおいては,基板由来の周期的な発光スペクトルの歪みが見られる一方,このLEDは,半値幅が22nmという狭く鋭い発光スペクトルを持ち,基板由来の周期的な発光色歪みが抑えられることが確認された。
さらに,作製したペロブスカイトナノ粒子LEDは,バンドパスフィルタを用いることで,98.2%の選択制を持つ脈波信号の検出に成功した。
研究グループは,今後,ペロブスカイト光電デバイスを用いた,室内光で持続的に駆動可能な超薄型ウェアラブル機器の開発が期待されるとしている。