アパレルのアンリアレイジ,映像制作のIMAGICA GROUP,日本電信電話(NTT)は,2023年9月26日にパリ市内で開催された「ANREALAGE SPRING/SUMMER 2024パリコレクション」にて,ハイパースペクトル画像を用いた色彩制御により衣服の色や柄を多様に変化させることで,「環世界」の世界観を表現した(ニュースリリース)。
NTTでは環世界の考え方に基づきIOWNが創り出す新たなUI/UXとして,受け手側の人,モノ,環境などの多様な価値観に応じて,伝えるべき情報やその処理の仕方を変化させられる情報提供の方法について検討している。
またNTTとアンリアレイジは,2021年よりパリコレクションで連携しており,NTTの技術とファッションを融合させた新たな演出手法を創出してきた。
一方NTTとIMAGICA GROUPは,空間とヒトの超リアルかつ環世界的なデジタルツインコンピューティングの実現に向けて,2022年12月より,IOWN時代のリアル・サイバー融合空間の表現・演出技法に関する総合的な共同検討に着手している。
今回のコレクションにおいて3社は,素材と照明の両方の効果で,服の色が次々と変化する演出を発表した。これによりファッションショーを通じて,ありのままの情報を伝えることで普段我々が見ている世界が1つだけではないという環世界の世界観を実験的に表現している。
照明制御により対象物の色や柄の見えを変化させるハイパースペクトル色彩制御技術は,照明シミュレーション技術と照明光スペクトル制御技術から構成される。
照明シミュレーション技術では,ハイパースペクトル画像から取得した対象物表面の分光特性(どの波長の光を反射・吸収・蛍光するか等)を用いて,様々な照明環境下での対象物の見え方を正確に再現する。また対象物の色や柄が変化して見える条件を探索・再現することで,演出者の意図に合わせた照明条件の設計を可能とする。
照明光スペクトル制御技術では,照明シミュレーションの結果をもとに複数の光源を組み合わせ,最適な照明光スペクトルを合成する。これにより,特定の光と色の条件下で成立するメタメリズムの実現や,白色の見え方は維持した状態での対象色の見た目の鮮やかさの制御(強調と抑制)などを可能とした。
今後,NTTとIMAGICA GROUPは共同検討をもとに,照明シミュレーションの精度向上と色彩制御のバリエーションを増やすことで,環世界の考え方にもとづく多様なコンテンツ・メディアによる豊かな表現・演出技法の確立をめざすとしている。