宇都宮大学,米パデュー大学,北海道大学,広島大学は,極端紫外 (EUV) 光源の変換効率の理論上限が10.3%であることとその条件を明らかにした(ニュースリリース)。
EUV変換効率の理論限界(上限)は 2006年に公表された7%から8%とされており,現在の露光機のEUV変換効率は約5%から6%となっている。
露光機メーカーなどは消費電力などの観点から,これまでの理論限界の7%から8%の変換効率をめざして研究開発を進めている。しかしながら,EUV光源の理論限界(上限)はまだ明らかではなかった。
研究グループは,大阪大学のスーパーコンピューター(SQUID)を使って数値シミュレーションを行なった。国内外の原子物理やプラズマ科学の研究成果を取り入れた放射流体シミュレーションコード(Star2D)をコンピューター上で走らせることにより,レーザー光をスズに照射したときに発生する高温気体(プラズマ)の密度,温度や運動,プラズマからのさまざまな波長の発光を計算することができる。
先端半導体を製造する技術である半導体リソグラフィーの光源として用いられる波長13.5nmのEUV光をどのようにすれば効率よく発光させることができるかを計算によって明らかにしていく中で,従来の効率を凌ぐ高効率が得られる条件を見出した。
研究グループは,レーザースポット径,プラズマスケール長,CO2パルス持続時間などのさまざまな要因が,プラズマパラメーター,EUV光の変換効率およびスペクトル純度にどのように影響するかについて包括的に議論した。
その結果,レーザーパルスの持続時間や予備成形プラズマのスケール長を調整することにより,EUV変換効率を現在の約5%から10.3%まで向上させるための指針を明らかにした。基礎となる詳しい物理プロセスを説明し,先行研究の結果と詳しく比較することで,今回の研究がそれらをどのように補完あるいは裏付けるかを説明した。
近年の国際情勢を反映したエネルギー問題の高まりとともに電力需要が逼迫している中,EUV露光機の消費電力を大きく下げる見通しもなかなか立っていない。
EUV光源の変換効率の理論上限が従来よりも大きく向上し,10.3%であることとその条件も明らかにしたことは先端半導体分野に大きなインパクトを与えるもの。研究グループは,今後,原理実証機や実用機のEUV変換効率の高効率化への指針が明らかになり,EUV変換効率はさらに向上するとしている。