東北大学の研究グループは,機械的強度に優れる格子構造とキャパシタ性能を付与する比表面積を併せ持つ炭素マイクロ構造「階層的多孔質カーボンマイクロラティス」を作製した(ニュースリリース)。
荷重を支える構造部分に蓄電機能を付与する,カーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)をベースとした構造的エネルギー貯蔵技術は強度について実績がある一方,カーボンファイバーを布状に織り込んで積層するため微細な形状・立体的な形状へ加工するのは容易ではない。
研究グループは,まず光造形3Dプリンタで造形する光硬化性樹脂に酸化MgOナノ粒子を混合した,複合材料樹脂を調整してマイクロラティス構造を造形,構造を保ったまま炭素化した。
得られたカーボンマイクロラティスを60℃の塩酸に1日半浸漬することで,含有されているMgOナノ粒子を脱離し,コンピュータデザインによる格子構造の孔(~100µm)を維持したまま柱の内部にナノ多孔質を導入した。
その結果,柱の内部にはMgOナノ粒子の脱離に由来するメソ孔(~50nm)に加えて,マクロ孔(~2µm)と非常に小さいミクロ孔(~1nm)が確認された。この結果より,格子構造マクロ孔・メソ孔・ナノ孔の4段階の孔径を有する階層的多孔質カーボンマイクロラティスが作製された。
マクロ孔・メソ孔・ナノ孔のネットワークは炭素化に伴う線形収縮率を従来の60~70%から40%まで減少させるだけでなく,植物の維管束のように梁の内部に広がり,ラティスと合わせて構造全体に速やかに液体電解質を輸送する流路として機能する。
ラティス構造は微細なほど充放電性能が向上し,過去のナトリウムイオン電池負極に関する研究と同様の結果が得られた。扱いやすい水系電解質・高電圧に耐える有機系電解質の両方で,最大105F・g-1及び 13.8F・g-1の比容量を示し,電極面積あたりに換算して各々11.5F・cm-21.5F・cm-2に達した。
現行の電気化学キャパシタは,ナノ多孔質カーボン中の電解質輸送が遅く薄膜形状に限られているが,今回の成果は厚さが「高さ」となるくらい立体的な構造にしても蓄電機能が発現できることを実証した。
またキャパシタとして機能する比表面積(150~300m2g-1)を有しながら,圧縮強度7.45~10.45MPaと剛性率400~700MPaを示し,変形の少ない構造材料としても十分な性質を示した。
研究グループは,今回得られた階層的多孔質カーボン構造を用いた実用的部材の作製に向けて,単位構造は数百ミクロンのまま全体としてはより大きなラティス構造の作製が求められるとしている。