三菱ガス化学は,提案した「光学用途向け特殊ポリカーボネートの水平マテリアルリサイクル実証事業」が,環境省の「令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 脱炭素型循環経済システム構築促進事業」に採択されたと発表した(ニュースリリース)。
同社の光学樹脂ポリマー「ユピゼータEP」は,スマートフォンやタブレットなどの高機能小型カメラレンズ用途で広く採用されている特殊ポリカーボネート樹脂。高屈折率と低複屈折を両立させるとともに,成形性も兼ね備えた光学材料として,近年スマートフォンのカメラの薄型化,高機能化に大きく貢献してきた。
プラスチックを材料とするカメラレンズの製造(射出成形)プロセスは,高い生産性を有する半面,必要となるレンズ部品以外のスプルーやランナーといわれる端材の大部分は廃棄されている。
昨今,循環型社会への転換に向けて廃プラスチックの再利用の重要性が増しているなか,同社でもユーザーの製造工程で排出される端材のプレコンシューマリサイクルを通じてCO2排出量削減に貢献すべく,2019年から「特殊ポリカーボネート・リサイクルプロジェクト」を始動し,これまで将来の実用化に向けて検討を重ねてきた。
高透明プラスチックの場合,異種プラスチックが僅かでも混入した状態でリサイクル処理を行なうと射出成形後のレンズが白濁してしまうことから,リサイクルを実用化するためには混入した異種プラスチックを徹底的に除去する選別技術が極めて重要だが,比重分離や近赤外分光法といった従来技術では実現が困難だった。
同社では,ラマン分光を用いることにより99.99%以上の高い純度で特殊ポリカーボネートのみを選別できる技術の確立に一定の目処が立ったことから,環境省の「令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うち,プラスチック等資源循環システム構築実証事業)」に応募し,対象事業として採択された。
同社は,ミッション「社会と分かち合える価値の創造」のもと,サステナブルな社会の実現に貢献するべく,今回採択された事業を通じて特殊ポリカーボネートの水平マテリアルリサイクルの実証検討を引き続き進めていくとしている。