矢野経済研究所は,国内外のM2M市場を調査し,市場規模,セグメント別の動向,参入企業動向,注目動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
この調査では,人が介在せずに,主に携帯電話/PHS通信規格に準じた通信モジュールを内蔵した機器・デバイス間で情報のやり取りをするM2M(Machine to Machine:機器間通信)を対象とし,ネットワークを用いたシステム構築やプラットフォーム利用動向を調べた。
それによると,2022年度の国内M2M市場規模は事業者売上高ベースで前年度比9.5%増の2,410億円と,ここ数年の低位推移から脱却し,二桁に近い増加となった。
2020~2021年度はコロナ禍で企業業績の先行きが不透明になったこともあり,新規システム投資の保留やPoC案件がペンディングになるなどの影響が出たという。
2022年度は行動制限などの影響も減少し,コロナ禍以前の人手不足/省人化ニーズや省エネニーズの顕在化,さらには人が介在しない遠隔/リモート処理志向の高まりといった流れもあり,ビジネス環境が大きく好転することとなったとする。
製造現場でのIT/IoT活用では,当初は「省エネ」及び「製造現場の見える化」に主眼が置かれていた。具体的には,電力消費状況を把握して省エネに結び付けるような対応と,設備稼働率の向上に資する取り組みが主体だったという。
製造業では2000年前後にM2Mが脚光を浴び,建設機械・重機や自動販売機,エレベータ,MFP(複合機),医療機器,計測機器(産業計測,自然環境計測)などに適用されたのが先行カテゴリーで,こうした機械では製品や機器・装置にIoT的な通信仕様が組み込まれていった。
これを受けて新設工場や新設ラインを持つ企業,省人化・省力化志向の強い企業,人手不足が深刻な企業などでは,生産現場でIoT活用が広がる状況となってきた。特に近年では,設備保全業務の高度化のためのIoT活用が拡大しているという。
M2M需要は引き続き旺盛で,2023年度の国内M2M市場規模は前年度比12.9%増の2,720億円を見込み,2026年度まで10%前後の伸長が継続すると見込む。
背景としては,2025~2026年度頃に5G対応通信モジュールが登場して,画像系(カメラ)ソリューションやコネクテッドカー系ソリューションなど新たな需要喚起が期待されること,920MHz帯を使用した多様な通信ネットワークの登場による新たな適用領域の創出がなされることなどが挙げられるという。
需要分野別に見ると、,エネルギー関連(スマートメーターソリューション,集中監視,リモート検針,遠隔制御など)や,自動車関連(コネクテッドカーなど)といった既存主力領域を中心に,設備・機器監視での遠隔モニタリングや,機器・設備データ収集,次世代設備保全,物流やインフラ監視などの分野でも広がりを見せているとする。
さらに今後は,5G対応による画像系ソリューション,画像データを使った医療分野やインフラ点検,防犯/防災ソリューションといった領域への適応が期待されるとしている。