山形大,安定な赤色量子ドットLEDの開発に成功

山形大学は,ペロブスカイト量子ドットの精密なサイズ制御とグアニジウム置換により,CsPbI3 QDsの構造安定化を実現し,高効率かつ長寿命な赤色量子ドットLEDの開発に成功した(ニュースリリース)。

赤色発光のCsPbI3量子ドットは,優れた発光量子収率と電荷輸送特性を示す一方で,イオンサイズの小さなCsカチオンにより,結晶格子の歪みや非光活性相への構造相転移が課題となっている。また,バルク結晶に比べ極めて高い表面積をもつ量子ドットは,イオン脱離やイオン拡散により発光性能が低下することが知られている。

この研究では,結晶格子歪みの緩和および量子ドット表面の安定化に着目し,相安定性を有するCsPbI3量子ドットを合成し,高性能赤色量子ドットLEDを開発した。

研究グループは,平均粒径6-12nmのCsPbI3量子ドットを合成し,結晶構造および光学評価を実施した。小粒径化されたCsPbI3量子ドットにおいて,光活性相の立方晶構造を形成し,斜方晶への相転移が抑制されたことを確認した。

これは,小粒径化により増大した表面エネルギーが格子歪みを緩和したことに起因する。また,遷移エネルギーと平均粒径の依存性を検証したところ,平均粒径10nm以下において,量子閉じ込め効果が発現していることを確認した。小粒径化されたCsPbI3量子ドットは,大粒径CsPbI3量子ドットに比べ,相安定化と量子閉じ込め効果により,比較的高い発光量子収率を示した。

さらに,量子ドット表面への高い吸着性を有するグアニジウムの導入により,大幅な材料安定性の向上に成功した。量子ドット表面へのグアニジウムの吸着エネルギーを第一原理計算により算出したところ,一般的な配位子のオレイルアンモニウムに比べ,高い吸着エネルギーを示した。

3つの窒素を有するグアニジウムは,量子ドット表面のハロゲンイオンと複数の水素結合を形成することから高い吸着性し,大気下および光照射下におけるPLQYの安定化を達成した。さらに,高い材料安定性を示したGAI-CsPbI3量子ドットを発光層に用いたLEDにおいて,外部量子効率22.5%および輝度半減寿命10.5時間を示し,ペロブスカイト量子ドットLEDの高効率かつ長寿命を達成した。

研究グループは,これらの高発光かつ高安定な赤色ペロブスカイト量子ドットは,高精細ディスプレーやレーザー,光センシングなど次世代のオプトエレクトロニクス技術への応用が期待されるとしている。

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