京大ら,1秒間3万コマ撮影の顕微鏡用カメラ開発

京都大学,沖縄科学技術大学院大学,フォトロンは,蛍光分子の1個の感度をもち,1秒間に3万コマの速度で撮像が可能な顕微鏡用カメラを開発した(ニュースリリース)。

細胞の働き方を理解しようとするとき,もっとも有用な方法の一つに,細胞の中での分子の群舞を,1個ずつの感度で観察・撮像する手法がある。研究者は,自分の見たい分子に蛍光分子をくっつけることで,蛍光を目印に分子の群舞を見ようとしてきた。

一方,従来,細胞内での分子の群舞を観察するためには,通常のビデオ(1秒間に30コマ)が使われてきた。科学研究向けに開発されたsCMOS(scientificCMOS)カメラも感度は高いものの,コマ速度が遅く,実用的な画像サイズでの撮影は毎秒数100コマ程度に限られていた。

しかし,1分子が機能する様子を見るためには,毎秒数万コマの撮影が可能なカメラが必要なため,この種の高速カメラでは1分子の挙動は見えなかった。

そこで研究グループは,従来の1蛍光分子感度で使われてきた撮像速度は遅い一方でノイズをあまり発生させないカメラの発想を逆転し,撮像速度がはるかに速いがノイズが大きいカメラを用い,そのノイズが1分子の検出に影響を与えないように工夫した。

その結果,撮像速度は,1秒間に3万コマ(ビデオ速度の1,000倍)に達した。しかしこの速度は現存する蛍光分子が光を発する速度によって律速されているため,蛍光分子がさらに速く光子を発するような改善がなされた場合には,1秒間に11万コマまでの対応が可能だという。

これにより,細胞膜分子が動き回る様子が見えるようになった。従来,細胞膜の分子はバレエ劇場の舞台(細胞膜全体)のようなところで乱雑に動き回っていると思われてきたが,実は舞台がパーティションで仕切られていて,分子はパーティションの中では速く動きつつ,ときどき隣のパーティションに移動するというような振る舞いをすることが分かった。

さらに,2014年にノーベル化学賞を受賞した超解像蛍光顕微鏡法は,1枚の画像を撮影するのに5分以上かかるという欠点があったが,このカメラの開発により,撮像時間が10秒程度に短縮でき,初めて細胞内の構造が,生きている細胞の中で超解像の精度で見えるようになった。

これによって初めて,細胞内の構造が,生きている細胞の中で,超解像の精度で見えるようになった。細胞膜には,細胞の足である「接着斑」という構造が存在し,ガン細胞の転移などに関わっている。この超解像画像が刻々と変化する様子と,そこでの分子の群舞の様子も分かってきた。研究グループは,このカメラを使い,接着斑について研究を進めるとしている。

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