三菱電機と米Coherentは5月26日,パワーエレクトロニクス市場向け8インチSiC基板の共同開発について基本合意書を締結したと発表した(ニュースリリース)。
SiCパワーモジュールは,従来のシリコンウエハーを用いたパワーモジュールに比べて低電力損失で,高温動作や高速スイッチング動作が可能となるため,省エネルギーや脱炭素化によるGX(Green Transformation)実現への貢献が期待されており,電気自動車分野などで市場の急拡大が見込まれる。
三菱電機はこの市場の拡大に対応するため,大口径化(8インチ)に対応した新工場棟を建設し,2026年に稼働開始する予定。同社は今回の基本合意に基づき,この新工場棟で生産するSiCパワーデバイスに使用する高品質な8インチSiC基板をCoherentと共同開発することで,SiCパワーモジュールの安定供給を目指す。
Coherentは,SiC材料を長年開発しており,2015年に世界初の8インチ導電性基板を実証し,2019年に欧州委員会が設立したHorizon 2020のもとで8インチSiC基板の供給を開始した。
三菱電機は,2010年にSiCパワーモジュールを搭載したエアコンを世界で初めて製品化した。2015年には新幹線に搭載する世界初のSiCパワーモジュールを供給するなど,家電,産業機器,鉄道車両分野でSiCパワーモジュールの市場をリードしながら,スクリーニング技術などの高性能・高信頼性の作り込み技術を蓄積している。
両社は今後,急拡大するSiCパワーモジュール市場に向け,高性能で信頼性の高い製品を安定供給することを目指すとしている。