旭化成と九州大学は,マイクロプラスチックの年齢(屋外で紫外線を浴びた経過時間)を推定する手法を開発した(ニュースリリース)。
海に流出したプラスチックごみは,紫外線照射などによって劣化し,次第にマイクロプラスチックと呼ばれる微細片に破砕される。その結果,いま世界の海洋表層には,約24兆粒のマイクロプラスチックが浮遊していると言われている。
自然には分解しづらいプラスチックであれば,今後,分解するまで数百年以上の長期にわたって漂流を続けるとも予想される。しかし,マイクロプラスチックが海を漂う本当の期間はこれまで不明だった。
研究グループは,プラスチックの特定波長帯での赤外線吸光強度比(カルボニル・インデックス)と置かれていた環境の温度,そしてプラスチックが照射された紫外線強度の時間積分値(累積量)の関係式を,現場実験と加速劣化試験を繰り返すことで見出した。
そして,実際の海洋で採取したマイクロプラスチックが受けた紫外線強度の累積量を求め,海域に平均的な紫外線強度から,紫外線を浴びた経過時間(年齢)を割り出した。その結果,年齢が1〜3歳の範囲に集中していることが発見され,海には浮遊マイクロプラスチックを,3年以内に海の表層から取り除く働きがあることがうかがえた。
一方で,陸近くの日本近海から採取されたものは,0〜5歳と年齢にばらつきが見られた。海岸に漂着する機会の多い陸近くに海で年齢が延びる事実は,先の取り除く機能が海岸に漂着した時点で失われることを示唆する。これらは,海の生物がマイクロプラスチックを沈降させる可能性と整合する。
この研究によって,海には,浮遊するマイクロプラスチックを1〜3年程度で海面近くから除去する働きがあることが示唆された。マイクロプラスチックの年齢推定は,海でのマイクロプラスチックの行方を知る上で重要な示唆を与える。
研究グループは,海でのマイクロプラスチックの浮遊濃度を予測するには,数年で海面近くから消えるという前提に立つことが必要だとする。今後はマイクロプラスチック生成メカニズムの解明により,海洋プラスチック問題の解決に寄与することを目指すとしている。