岡山大ら,ペロブスカイト太陽電池を長寿/高性能化

岡山大学と中国南方科技大学は,次世代太陽電池として期待されているペロブスカイト太陽電池の性能と安定性を向上する添加剤分子として「ベンゾフェノン(BP)」を発見した(ニュースリリース)。

ペロブスカイト太陽電池は,シリコン太陽電池に代わる次世代の太陽電池として期待されている一方,空気中の水分と反応し,容易に性能が低下することが課題となっている。

研究では,低分子添加剤であるBPが,ペロブスカイト太陽電池の性能と安定性に及ぼす影響を調べた。具体的には,FAPbI3のペロブスカイト前駆体溶液にBPを導入し,ITO/PEDOT:PSS/BP:FAPbI3/PC60BM/BCP/Agの積層構造を持つ太陽電池を作製した。

2mg/mLの最適濃度でBPを添加することで,太陽電池の出力特性(電流∸電圧特性)に現れるヒステリシスを抑制するとともに,太陽電池のPCEをBP添加無しの13.12%から18.84%へと大幅に向上した。

特筆すべきことに,BPベースの太陽電池は,相対湿度30%の大気中,25℃で700時間保存した後も,初期PCEの90%程度を維持した。対照的に,BPを添加しなかった場合,PCEは急速な劣化を示し,同じ条件下で300時間以内に初期値の30%しか維持できなかった。

次に,BPの添加がペロブスカイト薄膜の表面形状と結晶性にどのような影響を与えるかを調べたところ,BPを添加しなかった場合は,太陽電池の性能を阻害する多数の結晶粒界(GB)が観測された。一方で,2mg/mLのBPを添加した場合は,結晶が大きくGBの少ない,より滑らかで緻密なペロブスカイト薄膜が得られた。この膜質の向上により,太陽電池の性能と環境安定性が向上すると考えられる。

これは,ペロブスカイト膜の粒界不動態化に起因すると考えられるという。X線回折による構造解析から,BPの添加によって光に対して不安定な δ 相から,安定な α 相FAPbI3への構造変化が促進されたことが明らかになった。

このメカニズムとして,酸素ドナーであるルイス塩基を有するBP分子と,FAPbI3中のPb2+および FA+の分子間相互作用によって,励起キャリアのトラップによる再結合が効果的に抑制され,性能と安定性が向上したと考えられるという。

研究グループは,これらの結果から,BP分子はペロブスカイト太陽電池の性能と環境安定性を向上させる有望な添加剤であることが示されたとしている。

キーワード:

関連記事

  • インクジェット印刷で作製したペロブスカイト太陽電池

    リコー、インクジェット技術を活用したペロブスカイト太陽電池を量産へ

    リコーは、インクジェット技術を活用したペロブスカイト太陽電池の生産体制構築に関する提案が、経済産業省の「GXサプライチェーン構築支援事業」に採択された(ニュースリリース)。これを受け、ペロブスカイト太陽電池の量産を203…

    2026.10.28
  • ガラス型ペロブスカイト太陽電池を実装した都市景観イメージ

    パナソニックHD、ガラス型ペロブスカイト太陽電池を販売開始 量産を1年前倒し

    パナソニックホールディングスは、建物の窓や壁面などに利用できるガラス型ペロブスカイト太陽電池の先行量産品を、2026年9月から販売開始した。大阪府守口市の開発拠点で生産するもので、ガラスの透過性やデザイン、サイズを設置場…

    2026.10.23
  • 岐阜大、酸化チタンの「エネルギーの階段」でペロブスカイト太陽電池を高効率化

    岐阜大学の研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層に、エネルギー準位の異なる2種類の酸化チタン(TiO₂)を積層することで、電子輸送に適した「エネルギーの階段」を形成する材料設計を提案した。これにより、光電変換…

    2026.10.02
  • 京都賞、宮坂力氏など3人が受賞 ペロブスカイト太陽電池の生みの親

    稲盛財団は第41回(2026年)京都賞の受賞者を発表した。先端技術部門において、次世代太陽光発電技術である「ペロブスカイト太陽電池」を創成した功績により、化学者で桐蔭横浜大学大学院工学研究科特任教授および早稲田大学特命教…

    2026.06.19
  • タンデム型ペロブスカイト太陽電池の国内市場、累積導入量を12.5GWと予測

    矢野経済研究所は、タンデム型ペロブスカイト太陽電池(タンデム型PSC)の国内市場を調査し、参入企業の動向、将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。 2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画(経済産業省)…

    2026.05.08

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア