矢野経済研究所は,国内の画像解析システム市場の調査を実施し,画像解析システムの主要4分野の動向や関連事業者の戦略,市場の将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,AIを活用した画像解析については普及期にさしかかりつつあると言われてきたが,これまでコスト高や投資効果の不透明さなどの理由から,ユーザー企業が本格的な投資に踏み切れない状況が続いていたという。
こうした中で現在,車両そのものや車両のナンバーを認識する車両認識分野,顔により本人と認証したり,顔の情報から属性を判定する顔認証分野,主として小売業で来店客の分析を行うマーケティング分野,製造業で製品の不良品を判定する外観検査分野などで,ようやく画像解析システムの導入が進展しつつある。
AIベンダーを含む様々なベンダーによる,主に画像解析ソフトウェアのパッケージによる外販市場が立ち上がりつつあるという。
2022年度の画像解析システム市場規模(主要4分野計,ベンダー売上高ベース)は前年度比15.0%増の60億6,000万円を見込む。市場は急速に拡大傾向にあるものの,分野別の成長率に関しては濃淡が出る見込みだとする。
注目トピックとして,画像解析ソフトウェアや画像解析エンジンを取り上げた。この分野に関しては,AI系のベンチャーが事業化を目指して,様々なトライアルを繰り返してきた。
しかし,ここに来てAIによる画像解析技術のコモディティ化が進展しつつある。フリーソフトウェアの登場や,特にアメリカのIT大手による汎用のAIソフトウェアの展開,中国等アジア系の低価格ソフトウェアなどが市場に登場している。
また,大手監視カメラメーカーやアイリスオーヤマ,セーフィー等の新興カメラメーカーも自社の機器にこうしたAIによる画像解析ソフトウェアを採用し,画像解析機能を搭載することで,コモディティ化の動きに拍車がかかっているという。
今後は,画像解析システム市場の拡大が期待されるとともに,市場ではこうしたハードウェアベンダーとの競合,共棲が図られることとなるだろうとしている。
導入が進む画像解析システムだが,技術的な課題の一つは認識率だとする。外部環境にも影響され,どれだけ優れたアルゴリズムであっても認識率を100%にすることは難しい。一方,人手不足が顕在化している分野では,人に代わって業務を代替できる画像解析システムの導入は今後,急速に拡大すると見込む。
画像解析システム市場は,2021年度から2025年度までのCAGR(年平均成長率)19.2%で成長して100億円を突破し,2025年度の同市場規模は106億5,000万円に拡大すると予測している。