夏目光学は4月1日より,東京大学先端科学技術研究センターに「先端光学素子製造学」寄付研究部門を設置したと発表した(ニュースリリース)。
テラヘルツ光からX線まで,すべての光は光学素子(レンズやミラーなど)によって制御されることではじめてその真価を発揮する。光利用技術の性能は光学素子のクオリティで決まるとも言える。
例えば,光通信技術,レーザー加工技術,そして国際的にも重要物資となりつつある半導体デバイスの重要な製造プロセスの一つである露光技術などは,光学素子の性能向上や活用方法の開発によって飛躍的な発展を遂げてきた。さらに将来の高度な科学的ニーズ・社会的ニーズに対応し続けていくためには,最先端の機能を有する光学素子が必要となる。
夏目光学と東京大学先端科学技術研究センターは2012年から共同で軟X線光学素子の開発と高精度化を続けており,従来にないタイプの高精度回転体X線ミラーの実現に成功している。
研究グループは,極めて高い形状精度を必要とする軟X線ミラーの開発過程で「加工技術」「計測技術」「転写技術」のすべてをナノメートルレベルの超高精度にまで高めてきた。
これらの研究成果を基に,更なる高度な科学的ニーズ・社会的ニーズに対応する研究の進展と若手研究者の教育機会の創生を目的として,夏目光学の寄付により東京大学先端研に「先端光学素子製造学」寄付研究部門を設置した。将来に向けて更なる高度化とともに多様化する光学システムの要求に応えるために,ロボット・AIなどの最新の学問に基づく光学素子製造プロセスを研究する。
この研究部門の主な研究テーマは以下の4つ。
① 幾何光学・波動光学のハイブリッド光学設計理論の構築
② ナノ精度の加工,計測,転写による超精密な光学素子製造プロセスの開発
③ SDGsに対応した環境配慮型の光学素子製造プロセスの研究
④ ロボット・AI導入によるミラー・レンズ製造の自動化に関する研究
この研究部門には東京大学先端研 三村秀和教授,本山央人特任講師を迎え,研究を開始している。