富士経済は,新型・次世代太陽電池の世界市場を調査し,その結果を「2023年版 新型・次世代太陽電池の開発動向と市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
この調査では,色素増感太陽電池(DSC),有機薄膜太陽電池(OPV),ペロブスカイト太陽電池(PSC)といった新型・次世代太陽電池の市場の現状を捉え,将来を予測するとともに,参入企業20社の商用化や商用化から量産化・事業化に向けた見通しを展望した。
それによると,新型・次世代太陽電池の研究開発は,日本でも関心が高まっているが,商用化は海外が先行している。有望アプリケーションとして,BIPV(建材一体型太陽電池)やBAPV(建物据付型太陽電池),既存の太陽電池と組み合わせたタンデム型太陽電池,IoTデバイス用のセンサー電源などが注目されている。また,商用化ではDSCやOPVが先行しているが,参入企業数が多く,実証やサンプル出荷が進んでいるPSCの伸びが期待されるとする。
PSCは,一部で商用化が進んでいるものの,実証段階のメーカーが多いとする。用途としては,IoTデバイスやBIPVのほか,結晶シリコン太陽電池に重ね合わせることで発電効率向上が期待されるタンデム型が有望。
タンデム型は,結晶シリコン太陽電池の高付加価値化製品としての展開や既存の生産ラインを活用した生産体制の確立などが可能なことから,大手の結晶シリコン太陽電池メーカーによる開発も増えているという。
量産に向けて,欧州/中国メーカーを中心に動きが活発化しており,パイロットラインの稼働と生産技術の検証などを経て,2020年代半ばに量産が本格的に進むとみる。特に中国メーカーは大企業や政府機関の支援を受けて,GW規模の生産体制構築に向けた資金調達と設備投資を進めているといい,今後はタンデム型がけん引することで市場が拡大し,2035年には1兆円を予測した。
DSCは,ほかの新型・次世代太陽電池と比べて,いち早く商用化が進み,IoTデバイス用のセンサー電源として,メンテナンスフリーの利便性を訴求する製品が展開されているという。量産化については,既存のアモルファスシリコン太陽電池や一次電池に対してコスト優位性がなく,製品あたりの搭載容量が小さいことが課題だとする。
そのため,近年は,デザイン性や軽量,ポータブルといった特徴を活かしたコンシューマー向けの電子機器や充電器での搭載など,新規用途の開拓が進められている一方,変換効率や電圧の点で優位にある,PSCへ開発の軸足を移す企業も増加しているという。
OPVは,印刷技術を応用したフィルム基板の製品を中心に大面積化と低コスト化が図られており,海外メーカーが量産化を進めている。軽量・薄膜・フレキシブルという特性を生かして屋根材や壁材・窓材といったBIPV向けが多くを占めており,屋外での長期利用(20年間)も想定した製品開発と商用化が進んでいる。また,耐久性よりも透明性やデザイン性を重視した製品として,室内用窓フィルムや衣料品,タペストリーなどでも採用されているとしている。