OKIは,光ファイバーを介して多数の小型レーザー照射部を接続する多点レーザー方式により複数の対象物の振動を計測する「多点型レーザー振動計」において,振動雑音影響を緩和する「光ファイバー外乱抑圧技術(特許出願中)」を開発し,敷設された光ファイバーに混入する環境由来の外乱振動を約99%除去することに成功したと発表した(ニュースリリース)。
「多点型レーザー振動計」は,センシングを行なう対象の近くにレーザーを照射するセンサーヘッドを設置し,長距離の光ファイバーで振動計本体と接続することで,多点にある対象物の振動を計測する。
振動計本体以外は電気的な処理を行なわないことから,高い防爆性能を必要とする用途などに活用することができる。しかし,光ファイバーは一般的に敷設環境の振動に敏感で,敷設距離が長くなるほどその影響が蓄積して,計測対象の振動の把握が難しくなるため,屋外,あるいは工場のように多種多様な振動を発する装置がある環境への適用には課題があった。
同社は,光ファイバーに導通する光波の外乱振動が情報として累積することに着目して,「光ファイバー外乱抑圧技術」を開発した。これは,計測対象の振動と光ファイバーに混入した外乱振動の情報を分離させることで,外乱振動の情報を抑制することを可能にするもの。また,光ファイバー伝搬中に生じる多様な屈折率の変化に伴う光の特性変化を補償し,振動計本体とセンサーヘッドの安定した長距離分離を実現した。
「多点型レーザー振動計」にこの技術を組み込み,実環境を想定した実験を行なった。具体的には,「多点型レーザー振動計」に1kHzの計測対象振動とほぼ同等の振幅を持つ10kHzの外乱振動を混在させ,「光ファイバー外乱抑圧技術」搭載時と未搭載時で測定を実施した。
10kHzの外乱振動は,製造現場などで運用されている機械設備でも検出される振動周波数であるため,雨や風など実環境で発生することが想定される外乱振動をこの周波数で模擬できるという。その結果,この技術を未搭載時にあった10kHzの外乱振動が,搭載した際には99%以上抑圧できていることが確認できた。
これにより同社では,「多点型レーザー振動計」の設置環境の自由度が増し,多様な振動のある環境に適用することが可能となるとしている。