名古屋市⽴⼤学,⽇本原⼦⼒研究開発機構,静岡⼤学は,⽔銀を含まない全固体型遠紫外(230nm)光源の開発に成功した(ニュースリリース)。
遠紫外線を出⼒することが出来る唯⼀の殺菌⽤光源としてエキシマランプがあるが,価格が⾼い,電⼒から遠紫外線への変換効率が悪い,遠紫外線の出⼒が低い,寿命が短い等,実⽤に際して多くの問題を抱えている。
そこで研究グループは,⽔銀を含まない全固体型遠紫外(230nm)光源を開発した。この光源は,名古屋市⽴⼤学が研究してきたグラフェンナノ構造(GN)電界電⼦放出源と,静岡⼤学が昨年開発したワイドバンドギャップマグネシウムアルミネート(MgAl2O4)遠紫外蛍光体の組み合わせにより実現した。
具体的には,GN電⼦放出源より⾶び出して加速した電⼦(エネルギー10keV)がMgAl2O4遠紫外蛍光体に衝突することによって,⾼効率で⾼強度の遠紫外蛍光が発⽣する。このような構造を有する遠紫外線殺菌ランプは世界的にも例が無く,真空ナノエレクトロニクス技術を駆使したオリジナリティの⾼いランプだとする。
開発したMgAl2O4遠紫外蛍光体は,古くよりカラーセンター発光材料として知られていたが,加速した電⼦を⽤いて⾼効率な遠紫外線を得ることは,これまで困難だった。今回,遠紫外光の発光機構を⾒直して,これが酸素空孔⽋陥の数や⽋陥の物理的状態によって発光効率が⼤きく変化することを突き⽌め,この(酸素空孔⽋陥の)制御に成功した。
開発に成功した遠紫外蛍光体は,従来のものと⽐べて5倍から10倍⾼い効率を⽰すという。また,開発した遠紫外ランプが⾼い殺菌効果を有することを,⼤腸菌を殺菌する実験によって実証した。
今後の実⽤化に向けては,①ランプ寿命(現状1000時間)および②効率の向上(現状1%)が課題だとする。①ランプ寿命向上の課題に対しては,より⾼真空なデバイスの作製(デバイス内の真空度を10-7Paから10-8Pa に向上)により10000時間を超える寿命の実現が可能となるという。
また,②ランプ効率向上の課題に対しては,酸素空孔⽋陥位置の制御及び遠紫外蛍光体焼成条件の最適化により効率10%を実現することが可能。これら実⽤化に向けた課題は,近い将来解決できるとしている。
今回,開発に成功した固体遠紫外光源は⼈体に照射しても安全な紫外線光源であり,⽔銀を含まず,⼩型で⾼効率,安価だとする。研究グループは,様々な病原性ウイルス・細菌に対して⾼い殺菌効果を得ることができ,安全・安⼼に利⽤できる感染防⽌⽤光源として,今後役⽴つことが期待されるとしている。