理科大,レーザーでフィルム上に多層CNTを直接作製

東京理科大学の研究グループは,室温,大気圧下でプラスチックフィルム上に多層カーボンナノチューブ(MWNT)配線を従来よりも簡便に作製する方法を開発した(ニュースリリース)。

基板上にカーボンナノチューブ(CNT)を有するデバイスを作製する方法としては,主に「レーザー誘起順方向転写(LIFT)法」や「熱融合(TF)法」の2つの手法がある。LIFT法は,レーザーを照射した材料を対象基板に転写する方法であり,基板材料に依存しないことが特長。しかしながら,配線抵抗を制御することが困難,高価なパルスレーザーを必要とするなどの課題がある。

TF法は,事前にCNTとポリマーを混合した材料をレーザーで局所的に加熱し,ポリマーを気化させることで配線を形成する。この方法では,レーザー条件を変えることで,基板上の配線の抵抗を制御することができる。しかしながら,予め大量のCNTを調製する必要がある,高出力のレーザーを必要とするなどの課題があった。

研究では,ポリプロピレン(PP)基板上にMWNT薄膜をコーティングした後,レーザーを照射することで,MWNT配線を直接基板上で作製する手法を開発することに成功した。作製した配線の抵抗は0.789~114kΩ/cmで,レーザー照射の条件を変更することにより制御できることも明らかにした。

また,配線の形成メカニズムを解明するために,実際の分析とシミュレーションを組み合わせた検討を行なった。その結果,レーザー照射によって高温になったMWNT層中にPPが拡散することによって,MWNT/PP複合体が形成され,それが集合してMWNT配線となることを明らかにした。さらに,配線に使用されなかった余分なMWNTを回収して,新しい配線の製造に再利用できることも実証した。

研究グループはこの手法について,室温・大気圧でCNT配線やNTデバイスをプラスチック上に形成することができ,従来に比べ,プロセスコストが大幅に低減できると考えられることから,大量普及が期待される貼り付け型センサの実現に貢献できるとしている。

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