古屋大学の研究グループは,厚さ0.9nmのアモルファスシリカナノシートの合成に成功した(ニュースリリース)。
地殻上に大量に含まれるシリカの構造や形態制御による有効活用は元素戦略上極めて重要となる。こうした構造や形態制御のターゲットの一つとして,原子や分子レベルの厚さを有する二次元ナノシートが注目を集めている。
特に,アモルファスシリカのナノシートは,優れた機械的特性や広いバンドギャップを示すことが期待されており,次世代の電子デバイス,エネルギー分野での応用が見込まれる。
しかし,アモルファスシリカは非層状物質であるため,一般的な合成手法である層状化合物の剥離によるナノシート合成が困難だった。これまでに,界面活性剤の液晶を鋳型として合成したアモルファスシリカ-界面活性剤層状物質の剥離を検討した報告もあったが,いずれも剥離が十分に進行せず,新しい合成方法が望まれていた。
研究では,アモルファスシリカナノシートの合成を実現する方法として,固体の界面活性剤をあえて溶かさずに層状固体のまま利用し,その隙間でアモルファスシリカを析出させてから剥離する方法を検討した。
一般的に,界面活性剤を鋳型としたナノ材料の合成には,界面活性剤を一度溶かしてミセルにしてから,無機種と協奏的に自己集合させることで鋳型となる液晶を作り出す。これに対し,研究では剛直な鋳型としてクラフト点以下で形成する固体相の界面活性剤を利用し,その層間でアモルファスシリカを析出させた。
このようにして合成したアモルファスシリカは,単層で剥離することを見出し,厚さ0.9nmのアモルファスシリカナノシートの合成を実現した。さらに,アモルファスシリカナノシートが非常に安定に分散したコロイド溶液も得られており,数ヶ月後にも凝集しないほどの高い分散安定性を示すことが分かった。
加えて,ラングミュアー膜を利用した精密集積により,1nmレベルで厚さを制御した極薄膜の構築にも成功した。構築した極薄膜は,+1Vの電圧を印加した際の電流密度が10-9Acm–2と,極めて優れたリーク電流特性を示した。
アモルファスシリカは絶縁膜やフィラー,プロトン伝導体として様々な分野で利用される汎用的な素材であり,研究グループは,アモルファスシリカ超薄膜の活用法に新たな指針を与える成果だとしている。