千葉大ら,光の螺旋性で結晶のキラリティーを制御

著者: sugi

千葉大学と台湾国立陽明交通大学は,光渦をレーザートラッピング結晶化法に用いることで,塩素酸ナトリウムのキラル結晶化において,結晶のキラリティーが制御できることを世界で初めて明らかにした(ニュースリリース)。

⽣体を構成する物質(⽣体物質)の多くはキラリティーを⽰す。⾃然界における⽣体物質は,左⼿系あるいは右⼿系の鏡像体だけが選択的に存在することが知られている。これをホモキラリティーと呼び,その発⽣起源は不明だが,円偏光などの光の螺旋性が寄与している可能性が⽰唆されている。

ホモキラリティーの起源を探る⼿段の⼀つとして,キラリティーを持たないアキラル分⼦が結晶化することでキラリティーを⽰すキラル結晶化が注⽬されている。レーザートラッピング結晶化法は,強く集光したレーザー光の勾配⼒を利⽤して溶液中の分⼦の凝集体を捕捉して結晶核⽣成を誘起させる。これまでに光源に円偏光などを⽤いた実験はあったが,明確にキラル結晶化のメカニズムを⽰唆する知⾒は得られていなかった。

研究では,螺旋波⾯を持つ光渦をレーザートラッピング結晶化法の光源として⽤いたキラル結晶化を着想した。溶液中でアキラルな分⼦である塩素酸ナトリウムの飽和⽔溶液の気液界⾯に光渦を集光照射して結晶化を誘導した。

数分から⼗数分程度,光渦を照射し続けると結晶核が⽣成し,最初に準安定相であるアキラル結晶が現れた。さらに光渦を照射し続けるとアキラル結晶が安定なキラル結晶へと相転移した。光渦のパワーや⾓運動量の⼤きさなどを変えながら,各条件で30個以上の結晶を成⻑させて,結晶の鏡像体過剰率(CEE)を評価した。

その結果,光渦の螺旋波⾯の⽅向に対応した鏡像体が過剰に成⻑することが明らかになった。また,光渦の⾓運動量を⼤きくするとCEEが上昇することも明らかになった。光渦と同じ空間強度分布を持ちながら⾓運動量を持たない軸対称偏光を光源として結晶化しても有意なCEEが⾒られなかったことから,光渦の軌道⾓運動量がアキラル結晶からキラル結晶へと転移するときに結晶構造を⼒学的にねじっているものと考えられるという。

これらの結果は,塩素酸ナトリウムのキラル結晶化において光の⾓運動量が寄与することを⽰唆している。研究は,光の螺旋性がアキラル分⼦を階層的にキラル秩序(キラル結晶)へと誘導することを明らかにしたもので,光の螺旋性がホモキラリティーの起源に関与する可能性を肯定するもの。

また,光渦の⾓運動量をさらに⼤きくすることで,CEEをさらに向上させることも可能だとする。研究グループは今後,溶液から直接キラルな結晶核が⽣成する化合物のエナンチオ制御的なキラル結晶化が可能になれば,ホモキラリティーの起源にさらに迫ることが可能になるとしている。

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