埼玉大ら,メタ表面でキラル結晶の利き手に偏り誘起

埼玉大学,東北大学,新潟大学,名古屋大学,大阪大学は,円偏光よりも強くキラル物質と左右非対称に相互作用する光の励振が期待される誘電体メタ表面上で結晶構造にキラリティを持つ無機化合物を結晶化することで,円偏光のみでは得られない統計的に有意な利き手の偏りが観測されることを発見した(ニュースリリース)。

キラル物質は人工的に合成すると右手型と左手型が等量得られる。利き手は有毒性や催奇形性などに影響するほか,結晶材料中の電子スピンの制御にも関わるため,その制御は重要となる。

これまでに円偏光を照射してキラル物質の利き手の偏りを誘起する試みが行なわれてきたが,この方法で誘起される偏りは僅かだった。

研究グループは,キラル結晶化する物質として塩素酸ナトリウム(NaClO3)を用いた。光ナノインプリントリソグラフィにより,溶融石英基板上のSi薄膜を加工し,Siナノディスク配列体を作製した。

NaClO3は,水溶液中に溶解した状態ではアキラルだが,結晶化の結果として最終的に得られる結晶構造にキラリティを持つ。

作製したSiナノディスク配列体の上に,霧吹きで数10μmのNaClO3の微小液滴を形成し,液滴下のSiナノディスクへ可視連続波の円偏光レーザーを集光してMie共鳴を励振し,NaClO3キラル結晶化を誘起した。

結晶化後,得られるキラル結晶の利き手を偏光顕微鏡で判別し,これを,左右円偏光を用いて100回ずつ,計200回行なった。

また,対照実験として,Siナノディスク構造の無いただのSi薄膜上での結晶化実験を,左右円偏光を用いてそれぞれ25回ずつ,計50回行ない,利き手の偏りを比較した。

その結果,Siナノディスクの無い領域は,右手型と左手型の結晶はほぼ同数だった一方,Siナノディスクの有る領域は,優勢となった利き手の結晶は200回の結晶化のうち118回得られ,有意な偏りが生じた。優勢となる利き手は左右円偏光に応じて反転した。

一般にキラル結晶の利き手の偏りを示す,左右結晶の数の差を両者の和で規格化した指標である結晶鏡像異性体過剰率はおよそ18%だった。一方,キラル分子の利き手の偏りは鏡像異性体過剰率という,左右分子の濃度の差を両者の和で規格化した指標で評価される。

円偏光を用いたキラル分子の光化学反応によって得られる鏡像異性体過剰率はわずか0.5-2%程度であり,今回観測されたキラル結晶の利き手の偏りは非常に大きかった。

研究グループは,ナノ領域に局在した光を活用した物質キラリティ制御に新たな視座を与えるだけでなく,光のキラリティとキラル物質の相互作用の理解に貢献する成果だとしている。

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