国際科学技術財団は1月24日,2023年Japan Prizeの受賞者を発表した(ニュースリリース)。
本年の対象2分野の一つ,「エレクトロニクス,情報,通信」分野は,東北大学卓越教授(DP)/特任教授の中沢正隆氏と,情報通信研究機構 主席研究員の萩本和男氏が,もう一つの「生命科学」分野は英オックスフォード大学教授のゲロ・ミーゼンベック氏(オーストリア)と,米スタンフォード大学教授のカール・ダイセロス博士(米国)が,それぞれ共同で受賞した。
受賞業績は,中沢氏と萩本氏は「半導体レーザー励起光増幅器の開発を中心とする光ファイバ網の長距離大容量化への顕著な貢献」によるもの。半導体レーザー励起光増幅器の開発と実用化を中心として,波長分割多重伝送技術WDMや,多値伝送技術QAM,デジタルコヒーレント伝送技術など,一貫して光ファイバ通信網の長距離化および大容量化に対する多大な貢献を行ない,海底光ファイバ通信による大陸間通信や年々爆発的に増加するデータ量への対応など,グローバルなインターネット社会を支える基幹技術である長距離大容量光データ通信の道を拓いたことが評価された。
一方,ミーゼンベック氏とダイセロス氏は「遺伝子操作可能な光感受性膜タンパク質を用いた神経回路の機能を解明する技術の開発」によるもの。光を照射して狙った神経細胞の活動を自在にコントロールするオプトジェネティクス(光遺伝学)は生きた動物で使えるため,神経細胞の活動とそれによって生み出される行動との関係を直接調べることができる。ミーゼンベック氏は,この技術の概念と原理を考案し,実証に成功しました。ダイセロス氏は,この技術をより簡便かつ高精度なものに発展させた。光刺激を用いたこの技術は,いまや神経科学研究において不可欠なツールであり,この分野に目覚ましい発展をもたらしたことが評価された。
今年度は,国内外約15,500名の著名な科学者や技術者に依頼し,「エレクトロニクス,情報,通信」分野で123件,「生命科学」分野で204件の推薦を受けた。推薦された計327件の候補の中から,今回の受賞者を決定した。なお授賞式は,4月13日に帝国ホテル(東京・千代田区)にて執り行われる。