2022年偏光板の世界生産量,前年比79.4%に

矢野経済研究所は,2022年下期の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

それによると,2022年における偏光板の世界生産量は前年比79.4%の48,920万m2を見込む。ロシア・ウクライナ情勢,インフレ・景気悪化など様々な外部要因により,TVやモニターなど電子機器に世界的な不況が到来し,2022年の偏光板世界市場はマイナス成長となった。

ここ数年続いたコロナ禍を背景とした巣ごもり需要でのディスプレイ特需が消失しただけでなく,ディスプレー全般の不況を受けて,偏光板及び部材フィルム世界市場は大幅な減少を余儀なくされているという。

2022年6月からサムスン電子向けなど55インチ以上の大型High-Endパネル向け物量が大幅にダウンし,生産量をリードする65インチ以上のTV向け偏光板の販売が不調で,IT系ディスプレーパネル(モニター,ノートPC,タブレット)向け販売も厳しく,モニターやノートPC向け偏光板の出荷量は5月より物量が急減し,回復の目処が立っていない状況が続いている。

また,中小型パネルやスマートフォン向け偏光板の出荷量は一部の高価なブランド向けの物量は維持されているものの,スマートフォン向け全体の需要も大幅な減少となっている。2022年の偏光板及び部材フィルムの需要は,大型・中小型・IT系パネルなど全用途で減少する見込みだとする。

ディスプレー全般の需要減少により,偏光板メーカー各社の稼働率は2022年4月頃から下落し,7月頃には稼働率減少のピークを迎えた。各メーカーはマーケットで動いている一部の物量を確保すべく,この不況下での値下げ競争がスタートした。

偏光板世界市場では,新ラインが稼働する中国偏光板メーカーの生産拡大の影響も受けている。2022年7月まで稼働率を維持した中国系のShanjin(杉金光電)は,上期中は毎月最多生産量を更新し,さらに下期からも攻めの値下げ攻勢で他社シェアを獲得し大きくシェアを拡大している。BMCやCMMTなどの台湾系偏光板メーカーを巻き込み,韓国系メーカーも値下げに追随する形となり,2022年第4四半期での平均値下げ幅は10%以上となったという。

市場では2022年11月より中国・春節休みの前倒し需要があり,偏光板メーカー各社の稼働率は上昇傾向がみられるものの,2022年第4四半期にもTVやモニターなど電子機器需要の回復はそれほどみられず,TCL,Hisenseなどの32~43インチクラスの小型TV向けの偏光板需要のみ動いている状況だとする。但し,この値下げ競争は2023年からが本番とも言え,まだ体力のある中国系偏光板メーカーは本気で競合潰しに走っているという。

2023年における偏光板世界市場は,前半では各メーカーの一時的な稼働率上昇および出荷量の増加は見込まれるものの,本格的な回復基調とは言い切れず,後半にかけて回復スピードが加速していくと予測する。

2023年も続いているインフレ・景気悪化など様々な外部要因に左右され、,TVやモニターなど電子機器の消費が回復せずに,偏光板需要の繁忙期である第3四半期に向けても生産・出荷体制へ影響が続き,2022年のレベルを下回る可能性もあるという。

また,大手偏光板メーカーの新生産ラインの稼働による影響などの要因も加味する必要があり,2023年の偏光板・部材フィルム世界市場はさまざまな内外要因に影響され,市況は激しく変動していく見通しだとしている。

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